ダムの事前放流運用開始、日吉ダム下流住民が勉強会

 今年度から政府の方針としてダムの事前放流を行うことになりました。近年、大雨の最中にダムが満杯となり、緊急放流を実施しなければならないことが珍しくなくなってきました。2018年の西日本豪雨では、愛媛県の肘川上流のダムの緊急放流により、ダム下流の住民8人が犠牲となり、緊急放流を回避するための事前放流が課題としてクローズアップされることになりました。しかし、事前放流は大雨の3日前から実施しなければならず、気象予測が重要なのですが、その気象予測が必ず当たるとは言えないという問題があります。

◆2020年7月28日 京都新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/5d4c214202da7c49d1f397b6e28077b2d8348eb4
ー「水位上昇は死活問題」とダム下流域住民 大雨時、ダムが事前放流の運用開始 西日本豪雨教訓に住民ら勉強会ー

 2018年の西日本豪雨で、京都府南丹市日吉町の日吉ダムは緊急放流を行った。一部住民は把握しておらず、課題を残した。ダムは新たな警報の放送を導入し、従来以上に注意を促す。大雨が予想される際、前もって貯水位を下げる事前放流の運用も始めた。一方、住民は知恵を絞り、ダム下流の桂川沿いに位置する集落は勉強会を通じて防災意識を高めている。

  「異常な洪水が発生しており、川の水位が急上昇します」。独特の抑揚がある声と、「ウー」というサイレン音が響く。ダムへの流入量と同じ量の水を放流する緊急放流(異常洪水時防災操作)を告げる放送だ。

 西日本豪雨時の緊急放流について、日吉ダムに近い同市園部町大戸の女性(54)は「後で知った」と明かす。住民に情報を届けるため、新たな放送の導入に加え、NHKとも連携する。緊急放流の情報を伝え、NHKがテロップで流す。同市のケーブルテレビとも調整を進める。「雨音で聞こえづらい」との指摘を踏まえ、住宅に向けて放送するスピーカーも設置した。

 6月から運用するのが事前放流だ。降り始めからの実績雨量と、予測雨量の合計が260ミリに達する場合に、最大で1千万立方メートル、京セラドーム大阪8杯分に当たる水を事前に流す。豪雨時にダムに貯水できる量が増える結果、水資源機構日吉ダム管理所の新井誠輔所長(56)は「異常洪水時防災操作の回避や、避難時間の確保ができる」とする。今月上旬の長野県の豪雨では木曽川水系のダムで事前放流を実施し、水量を2割減らす効果が認められた。

  一方で、桂川沿いの同市日吉町に工場があり、西日本豪雨時にダンプなどが水に漬かった今井生コン(本社・亀岡市追分町)の川勝實社長(74)は「水位上昇は死活問題。事前放流を的確に行ってほしい」と求める。

 悩ましいのが、気象予測が必ず当たるとは言えない点だ。放流したが、雨が降らなかった場合、農業用水などの確保に支障が出かねない。予測精度の一層の向上が急がれる。

 住民も動く。「日吉ダムも絶対ではない。命を守る行動を考えなければ」。今月10日夜、南丹市園部町の川辺振興会で開かれた防災勉強会で、同振興会の竹井明副会長(67)が声を上げた。ダムから近い川辺地区では、西日本豪雨時、避難者が1割にとどまった。勉強会の継続に加え、危険箇所をまとめた独自のハザードマップを作り、防災意識を高めている。

 日吉ダムの運用が始まった1998年以降、ダム流域の年間降水量は平均1784ミリ。近年の降水量はやや上昇傾向にある。一定量の水が流入した際に放流する洪水調節の実施回数もここ6年の平均は2・8回で、全体平均の1・8回を上回る。経験のない豪雨がいつ襲ってきてもおかしくない。竹井副会長は「知ることが行動につながる。ダムの下流に住む者として今後も防災を考えていく」と強調する。