水資源機構の思川開発事業、南摩ダム本体工事着工間近

 水資源機構が進める思川開発事業では、近く事業の中核となる南摩ダムの本体工事に着手するとのことです。
 思川開発も八ッ場ダムと同様、半世紀にわたる必要性が失われた公共事業です。思川はあまりに水量の少ない小さな川なので、他の川から導水するための施設をつくって、ダムに水を貯める計画です。

★水資源機構 思川開発建設所ホームページ 事業のご紹介
https://www.water.go.jp/kanto/omoigawa/jigyou/gaiyo.htm

 水資源機構は水源開発を目的とした独立行政法人で、南摩ダムの主目的も水源開発ですが、水需要は減少の一途を辿っています。地元の栃木県も思川開発事業に参画しているのですが、ダム建設によって生み出される不要な新規水源を無理に使うため、県南地域(栃木市、下野市、壬生町)に南摩ダムの水を供給する県南広域水道事業を始めようとしています。この三市町では、水道水に地下水だけを使っており、市民は美味しくて安全性が高く、料金が安い水道水を享受しています。

 栃木県の計画では2030年度に三市町水道の地下水依存率を65%まで下げることになっており、将来は地下水依存率がもっと下がることが予想されます。このままでは三市町は地下水依存率の低下により、水道水はマズくなり、水道料金が大幅に上がることは必至です。
 三市町では、県南広域水道事業の中止を求める運動が展開されています。下記の記事には、南摩ダムが「現時点で水機構最後の新規ダムとなる可能性も」あると書かれています。

◆2020年8月23日 建設通信新聞
https://www.kensetsunews.com/web-kan/481499
ー【事業最後の主要ピース】水資源機構の思川開発事業 南摩ダム本体建設工事がまもなく始動ー

 数十年に1度の重大な危険が差し迫った異常な状況を表す『特別警報』が頻発している。近年、予測不能な大規模災害が全国各地で当たり前のように発生する中、水資源機構は、思川開発事業の中核的な役割を担う南摩ダム(栃木県鹿沼市)の本体建設工事に着手する。地域住民の合意を得て、2001年に損失補償基準に関する協定書を調印。その後、断続的に関連・準備工事を進めてきた。事業最後の主要ピースとなるダム本体工事の施工者を11月にも決め、21年から掘削工事などを本格化する。24年度の全体完成を目指している。

 思川開発事業は、思川の支川南摩川に南摩ダムを建設し、洪水を調節するとともに、思川支川の黒川、大芦川と南摩ダムを導水路で結び、水を融通しつつ効率的な水資源開発を目的とする。
 近年、思川では02年の台風6号、11年の台風15号、15年の関東・東北豪雨で家屋浸水などの被害が発生している。完成すればダム下流の南摩川、思川や利根川流域で洪水被害の軽減が期待される。

◆本体工まで半世紀
 一方、1969年の実施計画調査着手から半世紀を経たダム本体工事までの道のりは平坦ではなかった。当初はダム建設予定地に居住する住民の合意を得るまでの取り組みが長く続いた。転機が訪れたのは、98年9月の水源地域対策特別措置法に基づく南摩ダムのダム指定だ。これにより、住民との移転交渉は大幅に前進することになる。01年12月、損失補償基準に関する協定書の調印に至った。

 だが、今度は時代の要請から思川開発事業はゼロベースで検証を迫られることになる。10年9月に国土交通省からダム事業の検証にかかる検討の指示が出された。これを受けて水機構と国交省関東地方整備局は、「思川開発事業の関係地方公共団体からなる検討の場」を10月に立ち上げ、対応方針の原案作成に動くことになったのだ。

 関係地方公共団体も参加するこの検討の場で、相互の立場を理解しつつ、検討内容の認識を深める作業などに、5年超の歳月を費やした。そして16年6月の第7回幹事会で「思川開発事業については『継続』することが妥当である」と判断。この判断を踏まえて8月に国土交通省も「継続」とする対応方針を決定した。ようやく、ダム本体工事の着手が確定的となった。

 ダム型式は、建設地の地形・地質の特徴からロックフィルダムを採用する。当初は中央遮水壁型のロックフィルダムを予定していたが、最新の技術的知見を取り入れ、堤体積の減少によりコスト縮減、工期短縮、環境負荷が低減される可能性があるコンクリート表面遮水壁型ロックフィルダム(CFRD)に変更した。近代的工法(薄層転圧工法)を用いた本格的なダムとしては、国内で初めてのCFRDとなる予定だ。

◆受け継がれる思い
 このプロジェクトに携わる水機構の杉浦友宣ダム事業部設計課長はダム本体工事までの長い年月を踏まえ、「さまざまな事業の変遷があった」と話す。「ダムが中央遮水壁型から表面遮水壁型に変わったこともそうだ」と、技術的側面からも時の移ろいがあったことを説明する。

 現時点で水機構最後の新規ダムとなる可能性もあり、組織内で脈々と受け継がれてきた事業への思いを受け止めつつ、改めて「無事完成を目指したい」と気を引き締める。まもなくクライマックスを迎える工事に万全の態勢で臨む構えだ。

年度内に建設・機械の施工者決定/ダムサイト・導水路工事進む
 6月30日公告の「南摩ダム本体建設工事」の工期は25年3月31日まで。この工事とともに20年度は関連する機械設備工事2件の施工者も決定する予定だ。現在施工中の主な工事のうち、ダム本体関連工事となる「南摩ダムダムサイト敷地造成工事」は21年2月25日までを工期に大成建設が進めている。導水路関連工事の「思川開発導水路工事」は鹿島、「思川開発送水路工事」は奥村組が受注している。工期はともに25年3月31日まで。
 ダム諸元は、▽ダム高さ=86.5m▽ダム体積=約240万m3▽総貯水容量=5100万m3▽有効貯水容量=5000万m3▽黒川導水路=延長約3㎞、最大通水量=毎秒8m3▽大芦川導水路=延長約6㎞、最大通水量=毎秒20m3–となる。事業費は約1850億円。ダムの工事場所は栃木県鹿沼市上南摩町地内。