鬼怒川決壊から5年、生活再建と水害訴訟

 2015年の鬼怒川水害が起きてから、今日9月10日で5年になります。
 鬼怒川水害では関連死を含めて16人の犠牲者が出ています。被災住民は2018年8月、国交省を相手に建物の損害や慰謝料など計約3億3500万円の支払いを求めて、提訴しました。現在は水戸地裁で審理が行われていて、10月16日に第6回口頭弁論が開かれます。
 東京新聞が原告住民のお一人である高橋敏明さんを取り上げています。

 ★裁判の内容と経過
  ⇒「鬼怒川大水害訴訟」https://www.call4.jp/info.php?type=items&id=I0000053

 ★「目に見える爪痕、目に見えない爪痕」ー高橋敏明さんと鬼怒川大水害国家賠償訴訟のストーリー
  https://www.call4.jp/story/?p=498

◆2020年9月10日 東京新聞社会面
https://www.tokyo-np.co.jp/article/54484
ー鬼怒川決壊から5年、コロナ禍の再建「くじけない」 壊滅的な被害の花き生産販売会社ー

 関東・東北水害で茨城県常総市の鬼怒川の堤防が決壊してから、10日で5年。堤防は再整備され、市民は日常を取り戻したかのように映る。浸水で壊滅的な被害を受けた花き生産販売「フラワーセンター紫峰園」を経営する高橋敏明さん(66)も一歩ずつ、再建を進めてきた。だが今年は、新型コロナウイルスが行く手を阻む。それでも「くじけるわけにはいかない」と前を向く。(林容史)

10万鉢ほぼ全滅、被害額は5000万円超
 「これが修羅場なのか」
 鬼怒川から1キロ弱にある16棟のビニールハウス。当時、避難所から駆け付けた高橋さんは、その光景に絶句し立ち尽くした。
 丹精込めて育てたポトスなどの観葉植物が流されたり、倒れて泥をかぶったりしていた。「この道ひと筋45年。一生懸命、愛情を注いできた」という10万鉢がほぼ全滅し、被害額は5000万円を超えた。
 利益がたくさん出る商売ではない。新たに借金を抱えて再建しようとは、とても考えられなかった。
 だが、全国から来た何百人ものボランティアが泥かき、洗浄、廃棄物の処分を手伝ってくれた。一緒に働いてきた長女の明子さん(41)には「これぐらいであきらめちゃ駄目」と諭され、気持ちを奮い立たせた。

「お世話になった人たちに恩返しを」
 残った親木から優良な木を選んでは、挿し木でこつこつ繁殖させ、栽培を再開させた。「水害前ほどに回復するのは無理だが、お世話になった人たちに『再興できました』と報告するのが恩返しになる」。従業員たちのことも考え、短期間で販売できる品種を仕入れるなど工夫し、どうにか経営をつないできた。
 復旧への光が差し込んでいたところに、新型コロナウイルスの感染拡大が立ちふさがった。外出自粛で、贈り物やイベントなどで需要が増える3~5月の繁忙期を棒に振った。在宅勤務が増え、事務所や店舗からの注文もなくなった。

◆花と緑で社会に潤いと豊かさを
 水害に続くコロナ禍に「いつ何が起こるか分からない」と嘆きつつ、「社是は、花と緑で社会に潤いと豊かさを提供すること。それを実現したい」とあきらめるつもりはない。

 高橋さんは、全国で毎年のように繰り返される水害に心を痛める。「水害は人災の面もある」と感じているからだ。高橋さんのハウスがある地区は元々堤防がなく、砂丘林が自然の堤防となっていた。だが、掘削に許可を必要とする区域に国が指定せず、豪雨前に民間業者が太陽光発電事業で砂丘林を掘削した結果、「無堤防」状態になり、水があふれ出たとみている。
 堤防を管理する国に不備があったとして、高橋さんは周辺住民らと2018年8月、建物の損害や慰謝料など計約3億3500万円の支払いを求めて、水戸地裁下妻支部に提訴した。
 「国中の至る所に危険箇所があるのに、対策を怠ったために大災害につながっているケースもある。ダムを建設する前に、優先順位を付けてやるべきことがあるはずだ」と警鐘を鳴らし続ける。

 関東・東北水害 2015年9月9日に愛知県に上陸した台風18号により、関東・東北地方を中心に被害が出た豪雨災害。宮城、茨城、栃木3県で災害関連死を含め20人以上が死亡。茨城県常総市内では鬼怒川の堤防が決壊し、市域の約3分の1に当たる約40平方キロメートルが浸水。関連死を含め15人が死亡し、4000人以上が救助され、住宅5163棟が全半壊した。

◆2020年9月10日 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200910/k10012610861000.html
ー関東・東北豪雨から5年 鬼怒川の堤防が決壊した現場で献花式ー

 茨城県や栃木県などで大きな被害が出た関東・東北豪雨から5年となる10日、鬼怒川の堤防が決壊した茨城県常総市で献花式が行われ、地元の住民や関係者が亡くなった人への祈りをささげました。
 平成27年9月の関東・東北豪雨で茨城県内では、常総市の鬼怒川の堤防が決壊して、住宅およそ1万棟が水につかる大規模な被害が出て、関連死も含めて16人が亡くなりました。

 5年となる10日は決壊現場に新しくできた堤防の上で献花式が行われ、常総市の神達岳志市長など関係者らが花束をささげた後、集まった住民たちとともに黙とうを行いました。
 献花式には決壊現場のすぐ近くに住んでいる栗田千代子さん(78)も参加しました。

 栗田さんは夫の要也さんが川からあふれた水に流されて亡くなり、つくば市の公営住宅に身を寄せた後、3年前に建て直した自宅へ戻りました。
 栗田さんは「やっぱり1人はさみしいなと感じます。黙とうの時には、お父さんに守られて元気にしています、水害の1年前に生まれた孫が、ことし小学校に入りましたと伝えました。水害後に人が出ていったこの地域が、もっとよくなるのを長生きして見届けたいです」と話していました。
 神達市長は「5年がたち、改めて防災の取り組みを市民の皆さんとともに強化していきたい」と話していました。

◆2020年9月10日 共同通信
https://this.kiji.is/676706931244942433
ー鬼怒川決壊から5年、誓う防災 茨城・常総市で追悼式ー

 宮城、茨城、栃木の3県で計8人が死亡した2015年の関東・東北豪雨で、茨城県常総市の鬼怒川堤防が決壊してから10日で5年となった。決壊現場で追悼行事が開かれ、神達岳志市長は「区切りの年。教訓として防災力を強化し、自助、共助、公助の連携を強めていきたい」と誓った。

 雷鳴がとどろく中、市幹部や住民ら約30人が黙とう。自宅が被害を受けたという上三坂地区長の篠崎三郎さん(72)は「家の再建など一つ一つやってきた、必死な5年間だった」と振り返った。

 常総市では総面積の約3分の1が浸水し、5千棟以上が全半壊。豪雨後に13人が災害関連死に認定された。