八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

2018年西日本豪雨、野村ダム緊急放流めぐり遺族ら13人新たに提訴

 2018年7月の西日本豪雨では、愛媛県を流れる肱川で国交省の野村ダム・鹿野川ダムの緊急放流により、ダム下流域が大氾濫となり、8人の方が亡くなりました。
 遺族や被災者らは、野村ダムを管理する国と西予市に対し、約2億5641万円の損害賠償を求めて松山地裁に提訴しました。野村ダムと鹿野川ダムの緊急放流による氾濫被害については、すでにダム下流住民と遺族が1月末に提訴し、今月9日に口頭弁論が開かれました。

(参考ページ)「国土交通省、ダム緊急放流訴訟で原告住民と全面的に争う姿勢」

 この二つの裁判は併合される見通しです。

 なお、この水害をきっかけに、昨年10月の台風19号豪雨の後、国は緊急放流を回避するための事前放流のルール作りを進めました。間もなく首相に就任するといわれる菅義偉氏は官房長官時代の実績として、官邸主導でまとめた「事前放流」のルール作りを挙げています。
 ➡「洪水対策:縦割り行政を排し、新たに八ツ場ダム50個分の洪水調整機能を確保」(菅義偉、BLOGOS)
 

◆2020年9月10日 愛媛新聞
https://ehime-np.co.jp/article/news202009100043
ー西日本豪雨による西予・野村地域浸水被害 「ダム原因」遺族ら提訴 松山地裁 国・市に損賠請求ー

 2018年7月の西日本豪雨による肱川氾濫時、西予市野村地域で浸水被害が拡大して犠牲者が出たのは国の管理する野村ダムの操作や市の避難指示の遅れが原因として、遺族や被災者ら13人が9日、国と市に計約2億5641万円の損害賠償を求め松山地裁に提訴した。

 訴状によると、ダム管理者は気象情報を正確に入手して事前放流に努める必要があるが、操作規則に定められた放流しかせず、事前放流が十分でなかったため、一気に緊急放流して5人が亡くなり650戸の浸水被害が出たと指摘。国が1996年、大規模洪水に対応できない操作規則に変更し、大洪水の際の被害軽減を放棄したと訴えている。

 市については、ダムの治水効果を過信していたため浸水被害を検討せず、放流・浸水情報を住民に伝えられなかったとしている。

 野村ダムを運用する肱川ダム統合管理事務所と西予市はいずれも「訴状が届いておらずコメントは差し控えたい」としている。

【「夫の死 真実明らかに」 地域のため立ち上がる 原告の入江さん】

 「なぜ夫は亡くならないといけなかったのか」。西日本豪雨で夫の入江善彦さん=当時(59)=を亡くした西予市野村地域の原告・入江須美さん(53)。野村地域が洪水で破壊された理由を知りたいと願い、調べ続けてきたが、納得できる答えは見つかっていない。この疑問を解明したい一心で、裁判に臨む。

 2018年7月7日午前10時ごろ。愛車に乗ったまま氾濫した肱川(宇和川)の水にのみ込まれた善彦さんを須美さんが見つけた。ダム操作に疑問を持ち調べ始めたが「最初は1人で訴えないといけないのかと思っていた」。ただ、全国から多くの人が情報を提供して支えてくれた。20年7月末まで野村地域で提訴を呼び掛け、集まった13人で立ち上がった。うち5人は今も仮設住宅で暮らしている。

 提訴後の会見で須美さんは「(野村地域は)悔しい思いを持っている人がほとんど。裁判は勇気がいるのでできない人も多いだろう。町の今後のためにもしっかりと裁判で調べていく」と力を込める。善彦さんへの思いを問われると声が震えた。長い2年間で、いろいろな思い出がよみがえる。真実を明らかにする決意を込め、今朝は自宅の仏前で手を合わせた。「『どうして』との思いは旦那も同じだろう。真実を知りたい」と毅然(きぜん)とした態度で語った。

 会見には、肱川沿いの家が2階まで浸水し、野村地域の仮設住宅に住む原告の兵頭善人さん(85)も同席。東京の長女が何年かしたら帰郷すると話しているが、再び豪雨で家が被災するのではと快諾できていない。

 野村ダムの操作規則が変わったことで放流量が増えるようになり、自宅の地下部分が浸水しやすくなるとの懸念もある。「最初は立ち退きになると言われていたが、7月には『ならない』と言われた。家を直すにも金がかかるし、どうしたらいいのか」。苦悩は2年余り過ぎた今も続いている。

◆2020年9月9日 テレビ愛媛
https://news.yahoo.co.jp/articles/e5dc8ce30a732f887183e1a4dae8e87cfa6355dd
ー西日本豪雨の被害はダム操作に問題 西予市の遺族ら13人が新たに提訴ー

 おととしの西日本豪雨による水害はダムの放流操作に問題があったとして、犠牲者の遺族らが9日、国などに約2億6000万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。

 訴えを起こしたのは、西日本豪雨での肱川のはん濫による犠牲者の遺族ら西予市の13人です。

 訴えでは「大規模洪水が予想されるにも関わらず十分な事前放流をせず、ダムの緊急放流につながった」などとして、国と西予市に対し約2億6000万円の損害賠償を求めています。

 原告・入江須美さん「なぜ人が逃げられなくなるような、津波のような放流をしなければいけなかったのか。私たち住民はこれらのことを知りたい」

 また西日本豪雨を巡っては松山地裁で9日、大洲市と西予市の別の遺族ら11人が起こした別の損害賠償訴訟の第一回口頭弁論が開かれ、被告側は「水害はダムの操作で生じたものではない」などとして、全面的に争う姿勢を示しています。

◆2020年9月9日 南海放送
https://news.yahoo.co.jp/articles/4d4cd9dc79ee45f3b77420f2ba51da3f99afb725
ー緊急放流裁判 野村町住民13人新たに提訴ー

 西日本豪雨での野村ダムの緊急放流を巡る裁判で、9日新たに野村町の住民13人が、松山地裁に提訴した。

 訴えを起こしたのは、西日本豪雨の浸水被害で家族を亡くした西予市野村町の住民3人と住宅が被災した住民10人のあわせて13人。
 2018年7月の西日本豪雨では、野村ダムの緊急放流で肱川が氾濫し、下流の野村町では、大規模な浸水被害が発生して住民5人が亡くなった。

 訴えによると、遺族らは、野村ダム管理事務所が安全基準のおよそ6倍の水を放流した操作には重大な過失があるとしている。また、西予市は、住民への放流情報などの周知を怠っていたとして、ダムを管理する国と西予市にあわせておよそ2億5600万円の損害賠償を求めている。

 なお、野村ダムと鹿野川ダムの緊急放流を巡る裁判では、これまでに西予市と大洲市の遺族や被災者合わせて11人が提訴し、審理が行われている。