球磨川中流にある電源開発の瀬戸石ダム(熊本県芦北町、球磨村)は、水力発電を目的としていますが、7月の熊本豪雨で発電設備がダメージを受け、再開の見通しも立っていません。
瀬戸石ダムが球磨川の流れを妨げたため、ダム上流では急激に水位が上昇し、職員が管理を放棄した後、下流では瀬戸石ダムがどのような状況にあるのかも伝えられないまま、被害が拡大しました。このため、瀬戸石ダムの撤去を求める声が強まっているということですが、現時点では電源開発は使用不能なダムを撤去する意思がないようです。
(参考記事)
〇「熊本豪雨で球磨川「瀬戸石ダム」が決壊危機 現場証拠写真」
〇「市民団体が瀬戸石ダム撤去要望、国と電源開発に、「豪雨被害拡大の一因」」
球磨川、坂本町。濡れながら命からがら助かった方の話を聞く機会が増えてきた。瀬戸石ダムの放流放送が、毎秒3500トンを最後にブラックアウトになっていた。そのことが避難が間に合わなかった原因の一つであったことを都度知らされる。あの時、放送があったら、もう少し余裕をもって逃げれたはずだ。
— kumakappa (@kumakappa) September 22, 2020
瀬戸石ダム、越流していた。堰上げ効果で、上流の水位を上げていた。障害物となり、落差で、水の位置エネルギーを増大させ下流の水の破壊力を増していた。上下流に被害を拡大させていた可能性を否定出来る学者などいないと思う。それなのに瀬戸石ダムの存続を拒否する関係行政の長はいない。
— kumakappa (@kumakappa) September 22, 2020
◆2020年9月21日 熊本日日新聞
https://this.kiji.is/680594245522670689?c=92619697908483575
ー球磨川の瀬戸石ダム 発電再開見通せず 「被害拡大」強まる撤去要求ー
球磨川中流にある電源開発(Jパワー)の瀬戸石ダム(熊本県芦北町、球磨村)は7月の豪雨で発電設備が浸水し、以来、発電を停止している。ダム本体と発電設備の被害を調査中だが、完了時期や発電再開時期は「現時点では公表できない」(同社広報室)。一方、流域の住民からは災害後、ダム撤去を求める声が強まっている。
同ダムは1958年に運転開始した発電専用のコンクリートダムで、発電の最大出力は2万キロワット。
同社によると、7月3日午前5時から、大雨を見込んで水をためることができるよう、発電が可能な最も低い水位よりさらに3メートル低い状態に放流操作していた。4日午前2時すぎ、急激にダムへの流入量が増え、毎秒2千立方メートルを超えた。ダム下流域に大きな被害を及ぼす恐れがある「かつて経験のない流入量」だった。
その後も流入量は増え続け、放流量を調節する五つのゲートを水面から離す操作を繰り返し、流入した水がそのまま流下する自然河川に近い状態を保った。しかし、午前6時ごろに5千立方メートルを超過。午前7時までにゲートを全開にして、操作員2人が避難した。
球磨川の濁流によって、ダム本体上部に架かる全長約100メートル、幅約3メートルの連絡橋(管理用道路)に複数あるコンクリートの接ぎ目に最大約70センチの横ずれが生じた。ダム右岸の国道219号には多量の流木が堆積した。
同社によると、7月13日以降、ダム本体の目視点検や測量による調査を実施。接ぎ目に横ずれが生じた連絡橋とダム本体は別の構造であり、「本体の安全性に影響はない」と強調する。
ダム両岸の道路はダム本体よりも低い位置にあり、ダム湖の水が両岸の道路にあふれたことも確認。外部専門家の助言を得ながら、現在も調査・計測を継続しているという。
ダムが周辺地域の被害に影響を与えたかどうかや、ダム湖に堆積した土砂の洪水への影響についても「調査中」としている。
一方、球磨川流域の住民でつくる「瀬戸石ダムを撤去する会」は、以前からダム湖に堆積した土砂の洪水への影響を懸念。出水晃共同代表(76)らは今回の災害を受け、国に対し、同社にダム撤去を求めるよう要請。ダムが周辺地域の被害に与えた影響の調査と報告も求めた。
出水共同代表は「ダムが川の流れを妨げ、急激な水位上昇を引き起こし、周辺地域の被害を拡大した」と指摘している。(山本文子)