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球磨川水害第二回検証委員会、「ダムありき」で議論加速

 昨日(10月6日)、7月の球磨川水害の検証委員会の第2回会合が開かれました。
 以下のページに委員会の資料が掲載されています。
 http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/river/index/index.html

 昨日の検証委員会では、国土交通省九州地方整備局が川辺川ダムが7月豪雨の際にあったなら大きな効果があったと報告し、推計値を発表しましたが、球磨川の最大流量の算出根拠についての説明ははっきりしませんでした。
 
 国と県、流域自治体の検証委員会は今回で終了し、3者は球磨川の治水対策を検討する新たな委員会を近く設置するということです。蒲島郁夫・熊本県知事は会合後「年内に治水の方向性を決めたい」と述べており、川辺川ダム推進に向けて一気に進む様相を呈してきました。蒲島知事はこれから民意を聞いていくとしていますが、その時期や方法については何も示されていません。

 以下の毎日新聞の記事には、球磨川流域の山江村の内山慶治村長が群馬県の八ッ場ダムに触れ「2019年の台風19号の時、下流はダムのおかげで救われたと聞いた。ダムが効果があると改めて感じた」と発言したと書かれています。八ッ場ダムにまつわるフェイクニュースが川辺川ダム復活にまで利用されているとは、やりきれない思いです。

◆2020年10月6日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20201006/k00/00m/040/277000c
ー「ダムありき」で議論加速 慎重意見の首長わずか1人 川辺川ダム効果推計ー

 7月の九州豪雨で氾濫した球磨川流域の被害を検証する国と熊本県、流域自治体による検証委員会で、国は6日、川辺川ダムがあれば流域の浸水被害を軽減できたとの推計を示した。出席した流域の首長らは川辺川ダムを治水対策の中心とすべきだとの姿勢を強めているが、豪雨からわずか3カ月で加速する「ダムありき」の議論には住民らから反発の声も上がる。

ダムの重要性、必要性が実証された」
 「ダムの重要性、必要性が実証されたと思っている。今後はダムを柱に種々の方法を組み合わせていくことも必要ではないか」。検証結果を受け、錦町の森本完一町長は語気を強めた。

 流域12市町村長でつくる「川辺川ダム建設促進協議会」の会長として豪雨後、ダム復活の旗振り役を務めてきた森本町長は、ダムの形状にまで踏み込み「流水型ダム」を提案。ダムの下部に開いた穴から普段は常時川の水が流れ、洪水時だけ水をためる治水専用の流水型ダムは環境への負荷が小さいとされる。今後の議論の焦点になるとみられる「流水型ダム」に言及することで、森本町長はダム建設への強い意欲を示した。

 山江村の内山慶治村長は、川辺川ダムと同様に旧民主党政権がいったん中止を決めながら復活した群馬県の八ッ場ダムに触れ「2019年の台風19号の時、下流はダムのおかげで救われたと聞いた。ダムが効果があると改めて感じた」と発言した。

 熊本県の蒲島郁夫知事が08年に川辺川ダムの「白紙撤回」を表明した背景には、最大受益地の人吉市と建設予定地の相良(さがら)村の当時の首長によるダム反対があったが、人吉市の松岡隼人市長は「(今回の豪雨で)治水対策に取り組む前提も大きく変わった。住民も安全に不安を持っている。やれることはすべてやる」と語り、ダム容認の姿勢をにじませた。

 一方、相良村の吉松啓一村長は「(村内を流れる川辺川が)14年連続で清流日本一になったのは村民の誇り」と述べたが、こうした慎重意見を表明したのは1人だけだった。蒲島知事はこの日、年内に球磨川の治水対策に一定の方向性を示す考えを明らかにしたが、流水型ダムについても「排除しない」と述べた。

「豪雨被災者の声を直接聞くべきだ」
 熊本市のホテルでは約20人がインターネット中継を見守った。反対する住民の間には、ダムに土砂が堆積(たいせき)することによる川の水の水質悪化を懸念する声もある。同市の市民団体「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の中島康代表(80)は「『清流を子々孫々まで残したい』という相良村長の声に、知事や他の首長も応えてほしかった。豪雨被災者の声を直接聞くべきだ」と憤った。

 ダム建設に反対した人吉市前市長の田中信孝さん(73)は取材に「避難指示の遅れなどの検証を放棄し、住民の関心をダムのあり無しに向かわせている。なぜ前日の明るいうちに避難させられなかったのかをしっかり検証しなければ、ダムを造っても再び被害が出るだけだ」と批判した。【城島勇人、清水晃平、山本泰久】

◆2020年10月6日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20201006/k00/00m/040/282000c
ー「川辺川ダムあれば人吉の浸水6割減」国交省が推計 治水策、年内に結論ー

 7月の九州豪雨で氾濫し甚大な被害をもたらした熊本県の球磨川について、国土交通省は6日、旧民主党政権が2009年に計画を中止した川辺川ダムが仮に建設されていた場合、氾濫自体は防げなかったものの、人吉地区の浸水面積を約6割減少させられたとする推計を明らかにした。国と県、流域自治体の3者による球磨川豪雨検証委員会の第2回会合で示した。検証委は今回で終了し、3者は球磨川の治水対策を検討する新たな委員会を近く設置する。蒲島郁夫知事は会合後「年内に治水の方向性を決めたい」と述べた。

 国交省の推計によると、7月4日の豪雨による球磨川のピーク流量は、同県人吉市で毎秒7400トンだったが、最大の支流の川辺川にダムがあればダムの洪水調節容量などから4800トンに減らすことができた。

 流量の減少により、水位は市街地が広範囲に浸水し、20人が死亡した人吉市で1・9メートル、特別養護老人ホーム「千寿園(せんじゅえん)」で入所者14人が死亡した球磨村渡(わたり)地区で1・7メートル低下。いずれも大きな被害が出た中流域の芦北町(あしきたまち)白石地区で1・5メートル、八代市坂本地区で1・2メートルそれぞれ水位を下げられ、川辺川でも球磨川との合流点手前の相良(さがら)村柳瀬地区で2・1メートルの水位低下が見込まれたとした。

 今回の豪雨で人吉市街地から球磨村渡地区にかけて568ヘクタールが浸水したが、水位低下により約6割減の223ヘクタールに抑えられ、このうち2階以上が浸水する3メートル超の浸水面積は224ヘクタールから25ヘクタールと約9割減らせたと結論づけた。

 一方、国交省はダム以外の治水対策についても検証。最も効果のある遊水地を中心とした対策の場合、ダムがなくても人吉市街地から球磨村渡の浸水面積を約4割減の350ヘクタールに抑えられたと推計した。

 8月25日の検証委初会合で、国交省は人吉市のピーク流量を毎秒7500トンから4700トンに減らせたとの推計を示していたが、今回それぞれ修正した。【平川昌範、城島勇人、清水晃平】

◆2020年10月7日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20201007/ddp/041/040/014000c
ー豪雨被災者 賛否交錯ー

 九州豪雨で浸水被害に見舞われた熊本県南部の被災者は、国の「川辺川ダムがあれば」の推計に複雑な思いを吐露した。

 同県人吉市は、球磨川や支流の氾濫で市街地が大規模に浸水し、20人が死亡、家屋4681棟が被害を受けた。市街地では平均1~2メートル程度浸水したとみられるが、国は川辺川ダム効果で水位を1・9メートル程度下げられたとの推計を示した。

 市街地の自宅が床上1・4メートルまでつかった建設作業員の男性(48)は「『ダムなんていらない』と思っていたが、被害に遭って『治水対策ができるなら造る意味がある』と感じた。きれいごとばかり言う人には腹が立つ」と語った。

 市街地の上青井町にある青井阿蘇神社は約1・2メートル浸水したとみられるが、国は検証委で「川辺川ダムがあれば、浸水しなかった」と報告した。近くで刃物店を営む岡正文さん(64)は「ダムを議論するのはいいが、被災者が置き去りになっている。家や仕事がない人もおり、まずは街の復旧・復興が先だ」と話した。

 人吉市の下流にある球磨村では、死者が25人に上った。3メートル以上浸水した渡地区について、国はダムがあれば1・7メートル程度水位を下げられたとみる。同地区の自宅が屋根までつかった女性(50)は「ダムがあったとしても、家が浸水したことには変わりない。ここに住む限り『絶対大丈夫はない』と思って過ごすしかない」。一勝地地区の自宅が流され仮設住宅で暮らす淋(そそぎ)剛さん(83)は「ダムを造るのであれば、下流の安全を考えて貯水や放水の管理を徹底してほしい」と注文をつけた。【栗栖由喜】

◆2020年10月6日 日本経済新聞(共同通信)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64679190W0A001C2ACYZ00/
ー川辺川ダムで浸水6割減 政府推計、熊本の豪雨被害ー

 熊本県の球磨川流域で7月発生した豪雨被害の検証委員会の第2回会合が6日、県庁であり、国土交通省は氾濫した球磨川支流に川辺川ダムがあれば流量が抑制され、人吉市内の浸水範囲は「約6割減少する」との推定を示した。「現行の川辺川ダム計画だけでは、全ての被害を防ぐことはできない」とも説明した。

 川辺川ダムを巡っては、豪雨後に建設計画の是非を巡る議論が再燃しており、推定結果が判断材料の一つになりそうだ。検証委参加の球磨川流域12市町村の一部首長からはダム建設に期待を寄せる声が出た。蒲島郁夫知事は会合後「ダムで被害を軽減できることは確かだ。参考にしたい」と報道陣に語った。

 国交省の川辺川ダムがあったと仮定した推定では、球磨川の水位は甚大な被害に遭った人吉市街で1.9メートル程度低下。八代市や芦北町、球磨村などの被災地でも1~2メートル程度下がる。人吉市の浸水面積は60.7%減と見積もった。浸水の深さ別の内訳では0.5~3メートルでは52.1%減、3メートル以上では88.8%減。

 川辺川ダムでは、流れ込む量をそのまま通す「異常洪水時防災操作」には至らないとした。

 ダムに反対する市民団体の中島康代表(80)は傍聴後の取材に「推定結果は根拠が不十分だ。清流を守るためにどうすべきかという議論がほとんどなかったことも残念だ」と批判した。

 国交省は八代河川国道事務所のサイトで推定を公開している。国交省と県、12市町村は新たな協議体を設け、推定を踏まえ治水対策を検討する。

 蒲島知事は2008年、川辺川ダム建設計画に反対を表明し、当時の民主党政権下で中止方針が示された。蒲島氏は今年8月下旬、球磨川の治水対策を巡り「川辺川ダムは選択肢の一つだ」と述べていた。〔共同〕

◆2020年10月7日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/651923/
ー「川辺川ダムあれば越水9割減」 熊本豪雨検証委で国が推計値公表ー

 7月豪雨で氾濫した熊本県南部の球磨川について国土交通省九州地方整備局は6日、県庁で開いた県、流域12市町村との第2回検証委員会で、支流での建設計画が中止された川辺川ダムがあった場合の「治水効果」を公表した。完全には氾濫を防げなかったとする一方、人吉市や隣接する球磨村の一部であふれ出た水量を9割抑えられ、浸水面積は実際の4割にとどめられた、とした。

 検証委はこれで終了。国、県、流域市町村は具体的な「治水対策」を検討する別の会議を設ける。蒲島郁夫知事は今回の検証結果を「科学的根拠」として対策の方向性を示す方針。時期については委員会終了後の取材に対し「年内の早いうち」と述べた。

 この日の検証委で国が示した人吉市付近での氾濫水量の推計は約5200万トン。川辺川ダムがあればこれを約600万トンに抑制でき、その結果、約569ヘクタールだった浸水面積を約223ヘクタールに減らすことができた、と結論付けた。

 人吉市では家屋の2階付近に達する3メートル以上の浸水が約224ヘクタールに及んだ。だが、推計を当てはめれば1割の約25ヘクタールにとどまり、床上浸水した国宝「青井阿蘇神社」も被害を免れた可能性があったという。

 川辺川ダムは国が1966年に計画を発表。2008年に蒲島氏が「白紙撤回」し、09年に国が建設中止を表明。今年7月の豪雨災害や検証委の推計を受け、ダムによる治水に方針を戻すべきかどうか議論が再燃している。

ダムの効果強調、リスクに触れず
 球磨川氾濫を巡る検証委員会で国土交通省九州地方整備局は、川辺川ダムがあった場合の「効果」を強調する一方、想定を超えた豪雨時の緊急放流など「リスク」には触れなかった。未曽有の災害が起きる昨今、住民も正しくリスクを理解することが大切だと考える識者らは、ダムがあれば安心との「神話」を懸念する。

 川辺川ダムは「80年に1度」の豪雨で見込まれる毎秒3520トンの流入を想定した設計。7月豪雨時の流入は3千トンと推計され、許容範囲に収まる。だが九地整によると、地形などからダムに流れ込む計算上の水量は最大で毎秒5160トンとしている。

 ダムは満杯になった場合、流れ込む量と同じ分だけ放流することでバランスを保つ仕組み。仮に川辺川に5160トンを放流した場合、下流域では多大な浸水被害が発生する恐れがある。

 2019年の台風19号では国交省管轄の6ダムが緊急放流した。小松利光九州大名誉教授(防災工学)も1億トン近い川辺川ダムの貯水能力に注目し「ダムなし治水より、確実に減災につながる」と強調する。

 一方、18年の西日本豪雨では愛媛県にあるダムの緊急放流後、下流の8人が濁流の犠牲になるなどリスクも伴う。3年前の九州豪雨では福岡県朝倉市の寺内ダムが緊急放流寸前に追い込まれた。

 市の担当者は、ダムが貯水中は避難行動が可能であることなどメリットを挙げ、放流で浸水するエリアなど事前に情報を周知する必要性を指摘。「住民はどこに避難すればいいのか判断できない。限界と効果の両方を知っておくべきだ」としている。(古川努)

◆2020年10月6日 日本テレビ
https://www.news24.jp/nnn/news86823032.html
ー球磨川治水「民意」どう反映?ー

 球磨川の治水対策について検証委員会は川辺川ダムがあったとしても全ての被害を防ぐことはできず、ダムによらない治水対策を加えても「完全ではない」との結果を発表。知事「民意聞きたい」。

球磨川豪雨検証委員会は国土交通省や熊本県のほか人吉市や球磨村など流域の12市町村で構成。8月の初会合では7月の豪雨災害を受け12年前に計画が白紙撤回された「川辺川ダムも選択肢の1つ」と蒲島知事が話し、更なる検証を進めていた。

2回目となる6日は、川辺川ダムがあった場合、人吉地点での今回のピーク量約7400トンを約4800トンに減らすことができると分析したが、それでも堤防を超える量と結論付けた。

更に川辺川ダムを白紙撤回して進めてきた「ダムに寄らない治水対策」を全て施したとしても浸水は防げなかったとの結果をまとめた。

これを受け流域の市町村長からは「ダムなし・ありきではなく、人の命を救うための方法を検討すべき」といった意見や「市町村長の総意として抜本的な治水対策を早期に立案してほしい」などの意見が挙がった。

蒲島知事も今後早急に国や熊本県などと新たな協議の場を設けると明らかにした。さらに…

蒲島知事
「一番大事な事はどうすべきかという民意。安全性とともに球磨川の恵みも永遠に享受したいと思いを考えながらどのような治水対策があるのか考えていき打ち出していかないといけない」

蒲島知事はこれから民意を聞いていくとしているがその時期や方法は未定。
検証委員会は終了し蒲島知事は年内の早い時期に抜本的な治水対策を打ち出したいとしている。