住民団体、球磨川の瀬戸石ダムについてJパワーに質問・要請書提出

 球磨川ではいずれも水力発電を目的とした荒瀬ダムと瀬戸石ダムが河川環境を悪化させ、水害被害を拡大するとして流域住民が撤去を求めてきました。
 荒瀬ダムはすでに撤去されていますが、瀬戸石ダムは球磨川の狭窄部に残されています。瀬戸石ダムは今回の洪水でも水害被害を拡大させたと流域住民は訴えていますが、ダムを管理運営する電源開発(Jパワー)はいまだに調査中としているため、住民の不信感は一層高まっています。
 国交省と熊本県は9月と10月に球磨川の水害を検証するための委員会を開きましたが、ここでは川辺川ダムがあればどれだけの治水効果があったかに焦点が当てられ、瀬戸石ダムの問題は取り上げられませんでした。

 住民らは本日、「瀬戸石ダム問題についての質問・要請書」を電源開発に提出し、洪水時と現在の瀬戸石ダムの状況について質問するとともに、改めて瀬戸石ダムの撤去を求めました。

 質問・要請書はこちらに掲載されています。
http://kawabegawa.jp/setoishi/20201008jpshitsumon.pdf

 蒲島知事は2008年に川辺川ダムの白紙撤回を求め、県営荒瀬ダムを撤去したことから、ダム推進側からダム反対派であるかのような批判を受けてきましたが、もともとダムに反対の立場ではありません。蒲島知事は県営の路木ダムを強引に建設し(一審の住民訴訟では住民側が勝訴)、阿蘇の自然を破壊する国直轄の立野ダムの検証で事業推進の意見を出しました。荒瀬ダムについても、前任の潮谷知事が決めた撤去方針を撤回しようとしましたが、その方針を変えるためには球磨川漁協の同意が必要となっていたことから、やむなく撤去することにしたと言われます。続いての撤去が要望されていた瀬戸石ダム(電源開発)は、県知事が水利権の更新を認めなければ存続が難しかったのですが、あっさりと水利権更新も認めました。
 
 関連記事を転載します。

◆2020年10月8日 熊本日日新聞
ー堆積する土砂対策 ダム撤去見据えた視点も<第2部⑤>ー

 想定内の雨に対しては治水効果を発揮して「治水安全度」に寄与するダムだが、年数がたつにつれて避けられない問題がある。上流からの土砂の堆積だ。

 9月11日、球磨川流域の住民らでつくる市民団体「瀬戸石ダムを撤去する会」の会員10人が、熊本県八代市の国土交通省八代河川国道事務所を訪れた。出水晃共同代表(76)は「堆積した土砂とダムが川の流れを妨げ、急激な水位上昇を引き起こして被害を拡大した」と訴え、瀬戸石ダムを運営する電源開発(Jパワー、東京)にダム撤去を求めるよう迫った。
 瀬戸石ダムは、球磨川中流の狭窄部(左岸・芦北町、右岸・球磨村)に位置し、1958年に発電を開始。2000年代に入り、2年に1度の国の定期検査でダム湖に堆積した土砂による洪水の危険性を指摘され続けてきた。
 今回の豪雨では7月4日午前7時までにゲートを全開。流入量がそのまま流れる「自然河川に近い状態」(Jパワー)にした後に操作員も避難した。濁流は両岸の道路にもあふれた。
 Jパワーは堆積した土砂の除去を毎年続けているが、流域に詳しい県立大の中島熙八郎名誉教授(農村計画学)は「水面の高さはダ厶建設前より推計で6~9メートル高くなっている」と分析。「今回も水位を相当押し上げた」として、ダムを撤去するべきだと訴える。

 一方、Jパワーは堆積した土砂の影響について「調査中」。
 瀬戸石ダムの約10キロ下流の八代市坂本町には、球磨川初のダムとして1955年に完成した発電用の県営荒瀬ダムがあった。紆余曲折あったが、2018年3月、全国のダムで初めて撤去された。
 荒瀬ダム撤去の方針は02年、電力需要の低下や施設の老朽化などを理由に、当時の潮谷義子知事が県議会で表明。10年の撤去開始を目指して工法や環境対策などの検討を進めたが、蒲島郁夫知事が08年6月、撤去方針を凍結した。最大の理由が当時危機的状況にあった県財政だ。
 60億円と予想していた撤去費用は72億円まで膨らみ、「莫大な費用を使って撤去するより補修する方が安く、有効利用するべきと判断した」と蒲島知事。さらに検証を進めると、費用は約92億円まで膨らんだ。蒲島知事は「苦渋の決断だ」と強調した。
 ところが09年9月、ダムに否定的な民主党の鳩山政権の誕生で、荒瀬ダム撤去への期待が高まり、蒲島知事のダム存続姿勢も揺らいだ。旧知の仲の前原誠司国土交通相(当時)にダム撤去への国の財政的、技術的支援を要請。国の対応を見極める姿勢に転じた。
 結局10年1月、前原国交相が、川の水を発電に使う水利権の更新を認めなかったことが“決定打”となり、蒲島知事はダム存続を断念、撤去に至った。一連の流れは、下流への影響を抑えた工法や撤去費用など、廃止する時も見据えてダムを造るべきだというこれまでになかった視点を浮き彫りにした。(太路秀紀、山本文子)

◆2020年10月11日 朝日新聞熊本版
https://digital.asahi.com/articles/ASNBB6SMNNBBTLVB008.html
ー瀬戸石ダムの豪雨被害 市民団体が電源開発に質問書ー

 球磨川にある瀬戸石ダム(熊本県芦北町、同県球磨村)の撤去を求める住民団体「瀬戸石ダムを撤去する会」は9日、同ダムを管理する電源開発(Jパワー、東京)に対し、7月の記録的豪雨による同ダムの上下流域の被害実態などに関する質問書を送った、と発表した。

 7月4日の豪雨では、瀬戸石ダムからの流量の住民向け通報が機器の故障などからできなくなったことがあり、撤去する会は「ダムの存在が被害を拡大させた」と批判している。これを裏付けるために必要な当時の流量や水位などのデータ開示を要請。「撤去の意思はないのか。ないなら理由は何か」と問うている。(村上伸一)

◆2020年10月12日 NHK熊本放送局
https://www.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20201012/5000010268.html
ー豪雨検証結果に市民団体が質問状ー

 7月の豪雨で氾濫した球磨川の治水対策を検証する国や県などの委員会が、ダムが建設されていれば浸水被害を6割軽減できたなどとする検証結果を示したことに対し、市民団体が12日県庁を訪れ、判断の根拠となった数値などを示すよう求める質問状を提出しました。

 質問状を提出したのは「川辺川を守る県民の会」など3つの市民団体のメンバーです。

 7月の豪雨で氾濫した球磨川の治水対策をめぐっては、今月国や県などでつくる委員会が、支流の川辺川で計画が中止されたダムが建設されていた場合人吉市周辺の浸水範囲を6割減少できたなとどする検証結果をとりまとめました。

 これについて提出された質問状では「ダムありきの議論だ」と指摘したうえで、根拠となった数値や詳しい算出方法などのほか住民の意見を聞く場を設けずに結論を出した理由など16項目にわたって説明を求めたうえで、検証作業のやり直しを要請しています。

 「川辺川を守る県民の会」の中島康代表は「まず、被災者の声を聞かないと何もわからないはずで、検証をやり直すべきだ」と話しています。