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「石木ダム、住民の敗訴確定 最高裁、上告退ける」(共同通信)

 長崎県の石木ダムの事業認定の取り消しを求めた裁判で、最高裁が住民側の上告を退ける決定をしたため、敗訴が確定しました。
 ダムをめぐる裁判では、裁判所が原告住民の訴えを門前払いする判決が続いています。
 ダム予定地住民らはこれとは別にダム工事そのものの中止を求める裁判も起こしていて、今月から福岡高裁で控訴審が始まっています。

 住民の方々は、裁判の結果にかかわらず、ダム予定地での暮らしを続ける意思を表明しています。全国から、不要で有害なダムを中止するために、引き続き応援をよろしくお願いします。

 速報をお伝えします。

◆2020年10月12日 共同通信
https://news.yahoo.co.jp/articles/5af9e3c695568f66d17b884e7bbee917fa8ca0ec
ー石木ダム、住民の敗訴確定 最高裁、上告退けるー

 長崎県川棚町に県と佐世保市が計画する石木ダム建設を巡り、反対する住民らが国の事業認定取り消しを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は住民側の上告を退ける決定をした。8日付。住民側敗訴とした一、二審判決が確定した。

 石木ダムは佐世保市の水不足解消や、川棚町の治水を目的に計画。国は2013年に事業認定し、反対住民らが15年に提訴した。一審長崎地裁は18年7月に請求を棄却し、二審福岡高裁も支持した。

 一、二審はいずれも利水・治水面でダムの必要性を認め、福岡高裁は「建設によって得られる公共の利益は損失より大きい」と結論付けていた。

◆2020年10月13日 長崎新聞
https://this.kiji.is/688560133766644833?c=39546741839462401
ー石木ダム 住民敗訴確定 事業認定取り消し訴訟 最高裁、上告退けるー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、水没予定地の住民らが国に事業認定取り消しを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は、住民側の上告を退ける決定をした。ダムの必要性を一定認め、住民側を敗訴とした一、二審判決が確定した。

 決定は8日付。通知文によると、原判決に憲法違反や重大な手続きの不備がある場合に最高裁に上告できると規定した民事訴訟法の条項に照らして、住民側の上告理由は「該当しない」として棄却した。

 石木ダムは佐世保市の慢性的な水不足解消と川棚川の治水が主な目的。県と同市は土地収用法に基づき、全用地の権利を取得したが、現在も水没予定地には事業に反対する13世帯が暮らしている。

 住民らは2015年11月に「必要性のないダムで土地を強制収用するのは違法」として国に事業認定取り消しを求め、長崎地裁に提訴した。利水、治水両面でのダムの必要性が主な争点になったが、同地裁は18年7月、佐世保市の水需要予測や県の治水計画を「不合理とは言えない」と判断。ダムの公益性を一定認め、住民側の請求を棄却した。

 控訴審の福岡高裁も一審判決を支持。「事業によって得られる公共の利益は失われる利益に優越する」として19年11月、住民側の訴えを退けた。

 住民側は上告理由書で「誤った事実を基礎とする事業計画は違法で、違法な事業により、国民の意思に反して財産を奪うのは違憲」などと主張したが認められなかった。

◆2020年10月13日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/653737/
ー最高裁、石木ダム国事業認定取り消し棄却 住民「それでも闘う」ー

 長崎県川棚町に県と佐世保市が計画する石木ダム建設を巡り、反対する住民らが国の事業認定取り消しを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は住民側の上告を退ける決定をした。8日付。住民側敗訴とした一、二審判決が確定した。

 同町川原(こうばる)地区の石木ダム建設予定地で暮らす原告は、最高裁の決定に憤りと落胆をにじませながら、反対運動を継続する思いを口にした。

 「川原地区13世帯の人権はどうでもいいのかしら。現場を一度も見ることなく決定するなんて」。岩永みゆきさん(59)は納得がいかない表情。川原房枝さん(79)も「主張を聞いてもらって判断が下されると思っていた。少しだけ望みを持っていたので心外」と残念そうに話した。

 住民は長崎県と佐世保市に工事差し止めを求める訴訟も起こしたが、今年3月の一審判決で請求棄却されるなど敗訴が続いている。

 「八方ふさがりたい…」。岩下秀男さん(73)は言葉を詰まらせたが「それでも闘い続けることに変わりはない」と言い切った。

 予定地の住民の土地や建物は土地収用法の手続きを経て、2019年に国が所有権を取得。県の行政代執行による強制収用も可能となった。住民が毎日のように座り込んでいる場所の近くでは、本体着工に向けた県道付け替え工事が進む。

 「今回の結果を受けて県側が勢いづくかもしれないが、こちらは絶対に動かない。座り込みは続ける」。岩本宏之さん(75)は淡々とした口調で、固い意思を示した。

 一方、中村法道知事は「ダム建設事業の公益上の必要性について、理解が得られ、早期にご協力いただけるよう、努力を続けたい」とコメントした。 (岩佐遼介、徳増瑛子)

◆2020年10月14日 朝日新聞長崎版
ー「公益性」の議論、深まらず 石木ダム訴訟、住民敗訴確定/長崎県ー

 石木ダム事業(川棚町)に公益性はあるのか一一。水没予定地の住民らが「ダムは不要だ」として国に事業認定取り消しを求めた訴訟は、

最高裁で実質審理のないまま退けられた。「佐世保市の水は本当に足りないのか」「ダムで川棚町の洪水は防げるのか」といった根本の議論は、なされないままだった。   

 国の事業認定によって道を開かれた強制収用の手続きにより、ダム建設予定地の川原(こうばる)集落に住み続ける住民たちは昨年、土地・家屋の権利を奪われた。それから2度目の秋が深まる。

 敗訴が報じられた13日もダム建設現場では40人ほどが座り込みをした。

 住民の石丸勇さん(71)は「やっぱりなという感じ。政治がらみの判決が続<司法に大きな期待は抱いていなかった」と淡々とした様子だ。一、二審判決が認めた「ダムの公益性」に疑問を呈してきた。 「利水・治水の両面でダムの必要性は疑問だという我々の指摘は妥当なもの。13世帯を追い出してまで造るような価値はない」と話した。  2009年に国に申請した事業認定について県は、住民との話し合いを促進するためだと説明してきた。だが、この10年余り、強制収用に向けた手続きが粛々と進む一方、ダムの必要性に関わる議論は深まらなかった。  佐世保市も住民が求める公開討論会は不要と譲らず、法廷だけが双方の主張が展開される場だった。

原告ら「司法の名折れ」
 川原の女性陣のりーダー格、岩下すみ子さん(71)は
「最高裁に少しの期待はあったけど、もともと頼みは自分のみ。みんなそう考えていて、その住民の団結こそが強み。ここに住み続けるという私たちの覚悟は未来永劫(えいごう)変わりません」と穏やかな口調で語った。

 ダムの目的のーつは佐世保市への利水。同市の宮野由美子さん(72)は「佐世保に水は足りている」という立場で、夫婦で訴訟原告にも加わり、住民と座り込みを続けている。
「まさに門前払い。納得できません。工事を遅らせ、世論に不当性を訴えていくだけ」
 夫で元裁判所職員の和徳さん(76)は「実態にそぐわないー、二審判決が確定したにすぎない。司法の名折れだ」と批判、今後も座り込みを続ける考えだ。

 一方、ダム事業を進める中村法道知事は12日、「昨年の控訴審判決で認められた石木ダム建設事業の公益上の有益性について、皆様のご利益が得られ、早期にご協力いただけるよう、努力を続けていきたいと考えております」とのコメントを出した。

 石木ダムを巡ってば、本体工事に先立って県が着手した道路建設などの関連工事の差し止めを求めて、住民や支援者らが起こした訴訟の控訴審が福岡高裁で続いている。(原口晋也)