南摩ダム本体、年内着工へ 鹿沼の思川開発事業(下野新聞)

 独立行政法人・水資源機構が栃木県で進めてきた思川開発事業の南摩ダムは、年内に本体工事に着手します。
 思川開発は水源開発を目的とした事業ですが、もともと不要な事業です。利根川支流の思川のさらに支流となる南摩川は、小川と呼べるほど川幅の狭い川で、集水域も狭いため、ダムに水を貯めるために、他の複数の河川から導水管を引いて貯水するというのが、南摩ダムを中核とする思川開発事業です。
右画像=(独)水資源機構・思川開発建設所ホームページより

 栃木県の県南地域(栃木市、下野市、壬生町)では、水道水に地下水のみを使っており、美味しく安全性が高く、料金が安い水道水を享受してきました。しかし南摩ダムができると、ダムの水を供給する県南広域水道事業を始めなければなりません。栃木県の計画では、2030年度にはダムの水を押し売りされる三市町水道の地下水依存率を65%まで下げることになっており、将来は地下水依存率がもっと下がることが予想されます。
 このままでは三市町は水道水がまずくなる上、水道料金が大幅に上がることは必至ですので、この三市町で県南広域水道事業の中止を求める市民運動が展開されています。

 関連記事を転載します。

◆2020年10月29日 下野新聞
https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/377834
ー南摩ダム本体、年内着工へ 鹿沼の思川開発事業 展望広場を一般開放へ【動画】ー

 調査開始から半世紀が経過した鹿沼市の思川開発事業(南摩ダム)で、国土交通省と水資源機構が年内にもダム本体工事に着手することが28日、分かった。2度の政権交代に伴う凍結期間などを経て、16年8月に同省が事業継続を決定してから4年あまり。2024年度完成に向けた工事が、より本格化する。本体着工を前に、同機構はダムの建設現場を一望できる展望広場を整備し28日、報道陣に公開した。11月1日からは一般開放する。

 ダムの本体工事は、工事受注者を11月までに決定し、12月中に契約を結び着工とする考え。実質的な工事も本年度中に始まる見通しという。

 事業は思川支流の南摩川に南摩ダムを建設し、付近の黒川、大芦川とダムを地下トンネルで結び水を融通させる計画。思川や利根川の洪水被害の軽減、流域自治体への水道用水の供給などが目的で、1969年度に実施計画調査が始まった。

 ダム本体は高さ86・5メートル。現地で掘削した岩石を積み重ねる「ロックフィルダム」形式で、貯水池側の壁面をコンクリートで覆う。総貯水容量は5100万立方メートルで、五十里ダムの5500万立方メートルに迫る。

 事業継続の決定後、19年度にダム本体の準備工事が始まり、現在はダム両端に位置する山の斜面を掘削している。水没予定地にある県道上久我-栃木線の付け替え道路は、延長約6・4キロのうち83%に当たる約5・3キロが完成し、21年度上半期中の全面開通を目指している。新型コロナウイルス感染拡大に伴う進捗(しんちょく)への影響はないという。

 水資源機構は、付け替え道路沿いのダム管理所の建設予定地にダムサイト展望広場を整備した。11月1日からの開放時間は午前9時~午後4時半。初日のみ現地で南摩ダムのダムカードを配布する。

 水資源機構思川開発建設所の小宮礼行(こみやひろゆき)総務課長は「移転者や土地提供者をはじめ多くの皆さまのご理解、ご協力の下で事業を進めている。多くの方に訪れてもらい事業目的を知ってほしい」と話した。

◆2020年10月29日 下野新聞
ー「決まった以上は早く」 南摩ダム年内着工 移転住民複雑な胸の内ー

 曲折を経た鹿沼市の思川開発事業(南摩ダム)は、年内にもダム本体工事に着手する見通しとなった。
 30年以上に及ぶ建設反対運動の末、代替地に移転した水没予定地の住民は「作ると決まった以上、一日も早く完成させてほしい」との思いを明かす。
 一方、ダム完成後の水道用水供給を巡り、県内の市民団体は「水道料金が値上がりする」と警戒を強めている。  (手塚京治)

 事業は1964年、東京五輪の年に構想が表面化した。当時は高度成長期。東京への人口、産業集中に伴う首都圏の水不足対策として構想されたとされる。

 水没予定地の4地区のうち3地区は「絶対反対」、I地区は「条件付き反対」を掲げ、住民は激しい反対運動を展開。しかし、やがて補償交渉に応じ、2008年には全80世帯が鹿沼市内外への移転を終えた。

 「結論が決まらない中では、先の生活脱計を立てられなくなっていた」。住民代表の一人として、国側と補償交渉に当たった駒場勝さん(70)は当時を振り返る。

移転しても、古里への思いが消えるはずはない。だが昨年、建設現場を訪れた際に「素晴らしいダムができる」と感じたという。

 4月に本格運用が始まった群馬県の八ツ場ダムと同様、公共事業見直しの機運にもまれた末、再開した南摩ダム建設。「けりをつけた以上、一日も早く完成させてほしい。そうでないと、ご先祖さまに申し訳が立たないんだ」。思いを飲み込み、言葉に力を込めた。

 一方、「ダムの水道用水利用は将来に禍根を残す」と市民団体「栃木県南地域の地下水をいかす市民ネットワーク」代表の大木一俊弁護士は強調する。
 ダム完成後、県内では鹿沼市、小山市のほか、県が卸売りする形で栃木市、下野市、壬生町がダムの分を水道用水として使う予定となっている。
 これに対し同団体は栃木、下野、壬生の3市町に関し「地下水を利用する現在の水道用水を、ダムからの表流水に転換することで水質が低下する。水道料金も上がる」と主張。
 署名運動などで各市町の方針転換を訴えている。

 県は現在、3市町側との担当部局級の検討部会の中で水の卸売りについて協議している。県が3市町側に水道用水の供給単価か示す時期は未定。
 大木さんは「必要のない水を買う必要はないと各市町に訴え、住民にも、より広く問題を周知していく」と話している。