球磨川「流域治水プロジェクト」に関する「学識経験者等の意見を聴く場」

 今月18日、国と熊本県は、7月に大水害となった球磨川の治水対策を「流域治水プロジェクト案」として提示しました。仕事納めを控えた23日には、このプロジェクト案に対して、オンラインによる専門家への意見聴取も「学識経験者等の意見を聴く場」として実施されました。
 「流域治水プロジェクト案」は「流水型ダム」として川辺川ダムを復活させることを柱とし、遊水池や川の拡幅、河床掘削も行うこととなっていますが、いずれも具体的な計画はこれからです。「学識経験者等の意見を聴く場」の座長はこれまでもダム行政に深くかかわってきた福岡捷二・中央大教授です。

 国土交通省九州地方整備局のホームページに当日の資料が掲載されています。

国土交通省九州地方整備局 八代国道河川事務所HPより 
「学識経験者等の意見を聴く場 令和2年12月23日開催」
 【議事次第運営要領経緯説明資料説明資料1説明資料2(1/2)説明資料2(2/2)資料3

 関連記事を以下にまとめました。

◆2020年12月23日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/theme/kawabegawa/id35721
ー球磨川治水策「流水型ダム、市房ダム改良、遊水地」 国、熊本県が提示ー

 7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策について、国土交通省と熊本県は18日の流域12市町村との協議会で、支流・川辺川への流水型ダム建設や遊水地整備、県営市房ダム(水上村)改良など「流域治水プロジェクト」で取り組むハード対策6項目の方向性を初めて提示した。国、県、市町村で今後、具体的に検討を進め、年度内に合意を目指す考えだ。

 協議会では、球磨川に雨が流れ込む「集水域」と「河川区域」、市街地などの「氾濫域」でそれぞれ対策を総動員し、中長期的に7月豪雨クラスに対応する目標を設定。流水型ダム以外のハード対策は、過去の「ダムによらない」治水協議などで積み上げた議論をベースとした。

 中でも今回、国や県が「速やかに基礎調査に着手する」と位置付けたのが、遊水地と市房ダム改良、流水型ダムの三つだ。

 河川から水を流入させて一時的にためる遊水地は、補償とセットで農地にためる「地役権補償方式」と、用地買収して地盤を下げる「掘り込み方式」の組み合わせを想定。7月豪雨で被害が出た人吉市街地より上流で効率的に洪水調節するために、勾配が比較的緩やかな場所を中心に営農状況を考慮して候補地を探す。

 市房ダムについては、現在も一定の洪水調節機能があるが、新たに放流口を増設して大雨前に確保できる貯水容量を増やす計画。下流の負荷を減らすため、最大放流量を毎秒650トンから400トンに引き下げる運用変更も検討する。

 蒲島郁夫知事が川辺川への建設を要請した流水型ダムは、国が放流量を調節できるゲート付き構造を提案したが、「規模や位置は検討中」とした。

 このほか、川幅の拡幅で堤防を陸地側に移す引堤は、球磨村渡-人吉市の一部区間で「川に突出した箇所のみ河岸拡幅を実施する」と明記。中流部や人吉地区が対象となる河床掘削については、自然環境やラフティングなどの利活用にも配慮し「最大限掘削する」とした。流水型ダムから下流の川辺川では、築堤や堤防のかさ上げも想定した。

 一方、これらの対策案を全て実施しても、7月豪雨クラスでは球磨村など一部の中流域で堤防を越水する試算が示された。このため、球磨村や八代市坂本町では対策実施後の水位を想定した宅地のかさ上げや、集落を堤防で囲む輪中堤整備を進める。

 ただ、「ダムによらない」治水策は10年以上取りまとめに至らず、どの対策を採用するかで流域市町村の利害対立もあった。県球磨川流域復興局は「今回は流水型ダム建設の方向性と水害再発の危機感を、市町村と共有できている。流域治水プロジェクト策定に向け、遊水地選定や市房ダム改良などできる作業から進める」としている。(高宗亮輔)

◆2020年12月23日 熊本日日新聞
https://this.kiji.is/714674517257191424?c=92619697908483575
ー球磨川治水案に「水害リスク示して」 専門家8人が国、熊本県に助言ー

 国土交通省と熊本県は23日、川辺川での流水型(穴あき)ダム建設や県営市房ダム(水上村)の改良などを組み合わせた球磨川流域治水プロジェクト案について、河川工学や都市計画の専門家8人からオンラインで意見を聴いた。専門家は「(中長期的な)対策と合わせて段階的に残る水害リスクを地元自治体に示した方がいい」と助言した。

 中央大研究開発機構の藤田光一客員教授(河川工学)は「対策をしても想定を超える洪水は起きる。致命的な打撃を避けるため、避難に必要な情報を出すことが重要」と指摘した。

 九州大農学研究院の大槻恭一教授(森林科学)は「降雨の流出量は地質によって変わる。森林の洪水緩和機能はあまり期待できない」。同研究院の平松和昭教授(農業土木)は、水田の貯水機能を利用する「田んぼダム」に触れ「水稲の生育を考えると、許容できる湛水[たんすい]はおおむね深さ30センチ、24時間以内」との見解を示した。

 国交省九州地方整備局の大野良徳・河川調査官は「今回の意見をプロジェクト案に反映する」と述べた。(高宗亮輔)

◆2020年12月25日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASNDR6TDFNDRTLVB014.html
ー流水型ダムめぐり専門家が意見 球磨川流域治水協ー

 7月の豪雨で氾濫(はんらん)した球磨川の治水対策をめぐり、国や熊本県などでつくる球磨川流域治水協議会は23日、「学識経験者等の意見を聴く場」(座長=福岡捷二〈しょうじ〉・中央大教授)を初めて開いた。参加した専門家からは、流域治水について住民への説明や地域の理解を得る努力を求める意見が出た。

 意見を聴く場は、今年度内に同協議会がまとめる「球磨川流域治水プロジェクト」の内容について、専門家から意見を聞くのが目的。河川工学、都市計画、森林科学、農業土木の8人がオンラインで参加した。

 小松利光・九大名誉教授(河川工学)は、国土交通省九州地方整備局が提示した川辺川へのゲート付きの流水型ダムに賛成する考えを示した。緊急放流にならないようにするため、ダムの貯水容量は「多少無理してでも大きくしたい」とも述べた。一方、島谷幸宏・九大工学研究院教授(河川工学)は、益田川ダム(島根県)など今ある流水型は「生き物の移動に対する配慮が不十分だ」と指摘。平常時は生き物が移動できるようにすることが重要だと言った。

 蓑茂寿太郎(みのも・としたろう)・東京農大名誉教授(都市計画)は、流水型ダムと貯留型ダムの違いを明確にしないと住民は理解できないとした。流域治水では市町村の役割が大きいとし、広域行政の必要性についても意見した。

 平松和昭・九大農学研究院教授(農業土木)は、農業を守る立場から、雨水を一時的に水田にためて河川への流入量を抑える「田んぼダム」に言及。コメの減収割合は、水につかった時間や品種、生育時期で変わるといい、水稲の生産を考えれば限界があることにも留意が必要だと言った。

 九州地方整備局の大野良徳・河川調査官は終了後に取材に応じ、「(住民へ)しっかり情報を出していかないといけない」と述べた。(伊藤秀樹)

◆2020年12月25日 人吉新聞
https://hitoyoshi-sharepla.com/news.php?news=4169
ー流水型や10億円に疑問 県へ説明の場求めるー

 熊本県の「復旧・復興プラン」に関する対象地域市町村議会への説明会は21日、五木村議会で終了した。
 ダム問題に翻ろうされてきた同村議会からは、プランに盛り込まれた新たな「流水型ダム」「五木村の振興」の振興基金10億円上乗せなどに疑問や不満の声が上がり、村に対する説明の場を設けるよう求めた。
 県の復旧・復興プランは先月24日に公表。豪雨で被害が大きかった球磨川流域12市町村と津奈木町を対象地域とし、基本理念に「生命・財産を守り安全・安心を確保する」と「球磨川流域の豊かな恵みを享受する」。 治水・防災対策では「流域全体の総合力による“緑の流域治水”」を掲げ、抜本的対策では「『緑の流域治水』の一つとして、住民の『命』と地域の宝の清流を守る『新たな流水型ダム』の推進」を盛り込んでいる。
 また、五木村の振興については「県政の重要課題としてこれまで以上に推進」とし、貯留型ダムから流水型ダムへの変更に伴う新たな活性化の計画策定、実行性確保へ五木村振興基金の10億円上乗せを示している。
 蒲島郁夫知事は、公表前日の11月23日に同村を訪れ、木下丈二村長と議会に対し流水型ダム建設と10億円上乗せを説明。議会は聞き置くだけとしたが、今月の議会定例会一般質問では不満の声が上がっていた。
 プランの説明は、先月24日に県庁で首長たちに説明。対象市町村議会の説明会は今月3日の山江村からスタートし、五木村が最後となった。

●五木ダム復活要望
 役場中会議室で開かれた説明会には、県から福原彰宏球磨川流域復興局政策監ら3人、村から全議員8人と事務局、木下丈二村長が出席。
 福原政策監は「プランは県だけでなく市町村や民間にも取り組んでいただくもの。県全体の復興を示しているが実施には関係団体の協力が必要不可欠。五木村とも連携して進めたい」と呼び掛け、プランの内容を説明した。
 議員たちから流水型ダムや10億円に関して疑問の声が出され、「貯留型から流水型に変更し国に求めただけで五木村には話がなく、これから協議するもの。10億円も23日に知事が来て発言されただけで議論が必要」。
 また、「下流域を守るため昭和41年からダム問題で苦労してきた。流水型に変わり戸惑いがある。五木村を守るために上荒地に五木ダムがあったが、五木ダムのプランは」と五木ダムの復活を要望。
 治水に関し「河川への土砂を防ぐには砂防ダムだけでは駄目。森林整備の担い手が少なく、山を守るための予算化を」と森林整備を求める意見も出された。
 最後に、岡本正議長が「流水型ダムの規模が国から明確にされていない。振興計画も具体化されていないし、10億円の根拠も分からない。早い機会に説明をしていただきたい。材料がないと私たちも住民と話し合いができない。今まではダムによらないでやってきたが、またダムを造るとなると違ってくる。早い機会に」と求めた。