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藤沼ダムの悲劇を繰り返さないための取り組み(福島テレビ)

 福島県は2011年3月の東北地方太平洋沖地震で原子力発電所による被害が甚大であったことが知られていますが、須賀川市にある藤沼ダム(阿武隈川水系)が決壊し、8人の方が亡くなるという悲劇もありました。その後、同じアースダムの藤沼ダム(総貯水容量150万㎥)が再建され、2017年4月から農業用水の供給を再開しています。

 この藤沼ダムをめぐる近況を地元の福島テレビが報道しています。

◆2021年2月14日 福島テレビ
https://www.fnn.jp/articles/-/143991
ー東日本大震災で決壊8人が犠牲に「藤沼湖」悲劇を繰り返さないための取り組み【防災大百科】ー

FNN取材団・記者(当時):「こちらダムが決壊した現場です。この先に本来、道があったんですが、道がほとんどなくなっています。湖にあった水も決壊と同時に、ほとんど流れ出しています」

東日本大震災による地震で決壊した、福島県須賀川市長沼地区の農業用ダム「藤沼湖」

春から始まる稲作に備え、満水近くまで蓄えられていた約150万トンの水が下流の集落を襲い、8人が犠牲になった。

1949年に完成した藤沼湖。震災前は周辺の水田、約830ヘクタールに水を供給してきた。しかし、その『恵みの水』が、地区に深く大きな爪痕を残した。

内山えみさん:「水が来たというイメージじゃなくて、真っ黒い木の塊の流れが来た感じなんです。それでドーン、ドーンと護岸にぶつかって」

藤沼湖の近くに住む、内山えみさん。

当時、避難中に濁流に流されたが、夫の賢二さんに助けられ九死に一生を得た。

その辛い経験を、これまで周囲に話すことは避けてきたが、心境に変化が起きていた。

きっかけを作ったのは、長沼地区の行政区長・柏村国博さん。

2022年の完成を目指し、仲間と一緒に当時の証言をまとめた記録誌を作っている。

柏村国博さん:「やはり防災意識を常日頃から持っていないといけないよ、という目的もあっての取り組み」

さらに、ダムの復旧や住宅の建て替えが進むなか、震災の風化を防ぐために慰霊碑を建てた。記録誌にとどまらず慰霊碑も建てた背景には、忘れてほしくない教訓があった。

柏村国博さん:「(地震後)部屋の中を見てみようと入ったら、どこからか水が、家の中に、どどーっと入ってきたという。『これは一体なんなのだろう』と、みんなそういう話でした。いま自分が住んでいる家は、どういう地形のどういう場所に建っているのかをもう一回、それぞれが調べておいた方が良いのかなという気はしています」

震災から約6年後、強化されたダムが完成し、「藤沼湖」で再び貯水が始まった。安全性を高めるために、ダムの地下には…

県中農林事務所 農村整備課・会田初男主査:「ダムの本体の土に水が含まれてしまうと、ダムの提体の安全性が問われてしまうため、その確認のためのチェックをしています」

ダムの安全性を確認する、観測施設を新たに設置した。また、住民に避難を呼びかける警報装置や防災無線も新たに整備した。

県中農林事務所 農村整備部・鈴木浩治主幹兼副部長:「二度とこのような被害、悲劇を繰り替えさないような強い決意のもと、ダムを復旧してまいりました」

8人が犠牲になった災害からまもなく10年。

経験を教訓にするために、ハードとソフトの両面から取り組みが進んでいる。