凍結12年…大戸川ダム着工へ再始動 計画変更手続きへ

 大戸川ダムの凍結解除に向けて、淀川水系河川整備計画の変更手続きが進められようとしています。
 大戸川ダムはとりわけ必要性が希薄なダムなのですが、かつては本体工事の凍結に動いた淀川流域府県がこぞって推進に方針転換し、国土交通省近畿地方整備局も事業推進を目指している今、歯止めをかける手段がありません。

 2000年代には、近畿地方整備局が設置した淀川水系流域委員会が事業凍結を提言し、関西ではダムに依存しない治水(淀川方式)を求める世論が盛り上がったように見えましたが、当時世論をリードしたマスコミもトーンダウンし、大戸川ダム反対の意見は朝日新聞が少し取り上げているだけです。

 朝日新聞が紹介している宮本博司さんは、近畿地方整備局の幹部として「淀川方式」を主導し、退職後も淀川流域委員会の委員長として流域住民と協働して治水計画を立てようと奮闘しましたが、守旧派の巻き返しに阻まれてしまいました。宮本さんは河川行政が20年前に逆戻りしてしまったことを深く憂いているということです。

◆2021年2月12日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASP2D462NP2DPTIL003.html?iref=pc_ss_date_
ー凍結12年…大戸川ダム着工へ再始動 計画変更手続きへー

 国が建設を凍結している淀川水系の大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)について、着工に向けた手続きが再び動き出すことになった。近畿地方整備局(近畿地整)が12日、関連する6府県との調整会議をオンラインで開催し、現状の整備計画の変更手続きに入ることで一致した。

 この日までに6府県が、了承したり、有識者会議でダムの治水効果について「効果がある」との意見をまとめたりしていた。調整会議では「具体的な事業費とスケジュールを丁寧に示してほしい」(大阪)などの意見が出た。

 近畿地整は2009年に大戸川ダムの建設を凍結した河川整備計画を変更して、事業推進に転じる案を作成する見通しだ。有識者の意見聴取や住民意見の反映を経た後、正式に各知事の意見を聴くことになる。

 近畿地整は頻発する豪雨災害などに備えるため昨年7月、ダム建設を含めた今後の河川整備の事業案を三重、滋賀、京都、大阪、奈良、兵庫の6府県に提示。これまでの淀川水系の整備事業も含めて、大戸川ダムがなければ、大阪府で9兆円、京都府で2兆円の経済被害がそれぞれ生じるとする想定を示していた。

 ダムの事業費は約1080億円。国が7割を負担し、大阪、京都、滋賀の3府県が3割を負担する。地方自治体負担分は氾濫(はんらん)が生じた場合に影響を受ける世帯数などに応じて、大阪が約58%、京都が約40%、滋賀は約3%を担う。

各地で相次ぐ災害、治水効果に期待
 凍結から12年。大戸川ダムが一転して動き始めた。背景の一つは、各地で相次いだ災害だ。

 「大阪は約9兆円」「京都は約2兆円」。近畿地方整備局は20年7月、淀川水系の6府県が集まる会議で、戦後最大級の洪水となった1953年の台風13号の雨量などを想定し、淀川水系流域2府の経済損失の試算を明らかにした。

 滋賀県の三日月大造知事は2019年4月時点で、災害対策のため「ダムは必要」と表明。大阪、京都はこの会議では留保したが、大阪府の河川整備審議会は今年1月、中上流部の河川改修が進んで下流の淀川の流量が増加するなどして堤防が決壊すると想定し、ダムは「十分な治水効果がある」と結論づけた。

 そして両府知事は「命、財産を守ることに必要な効果があるなら前向きに検討」(1月29日、大阪府の吉村洋文知事)、「議論の俎上(そじょう)にのせてもよい」(今月8日、京都府の西脇隆俊知事)と、相次いで建設容認と取れる発言をした。

 大戸川ダムは1968年に計画が浮上。治水、利水、発電の多目的ダム構想だった。しかし自然環境を重視した「脱ダム」の流れの中、水需要の減少などを受け、琵琶湖を含む淀川水系の氾濫(はんらん)を抑制する治水専用のダム計画に衣替えされた経緯があった。その後、当時の嘉田由紀子・滋賀県知事、橋下徹・大阪府知事、山田啓二・京都府知事らが2008年、「河川整備計画に位置づける必要はない」と主張。国は翌09年、建設計画を凍結した。

 しかし13年に台風18号によって桂川がはんらんするなど、京都府を中心に甚大な被害が発生。その後も西日本豪雨(18年7月)や熊本豪雨(20年7月)など、全国的に災害が相次いだ。

 西脇・京都府知事は今月8日、凍結からかじを切った理由について「やっぱり気候変動。毎年、非常に大きな台風や広範囲の水害がある」と言及。三日月知事も同9日、「色んな経緯があったが、以前より自然災害の猛威が増している」と、大戸川ダムの必要性を主張している。

 一方で、治水効果には懐疑的な声も。元国土交通省幹部でダム事業に関わってきた宮本博司さん(68)は、効果は限定的と指摘。「大戸川ダムで下がる淀川の水位はわずか。さらに強い雨が降れば堤防を越える。堤防強化や避難経路の確保などの対策に力を注ぐべきだ」と訴えた。

 ダムの建設予定地は大津市南東部の山中。水没予定地の55戸はすでに下流に移転している。

◆2021年2月12日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJB10A200Q1A210C2000000/
ー大戸川ダム建設へ計画変更 近畿地方整備局、6府県容認 ー

 国土交通省近畿地方整備局は12日、大阪府や京都府など淀川水系6府県と、広域的な河川整備のあり方を議論する調整会議をオンラインで開いた。本体工事が凍結されている淀川水系の大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)について、6府県は治水効果を認め、同ダムを含んだ河川整備計画の変更手続きに着手することを了承。整備局は変更手続きに入ることを決めた。今後、国が示す変更案に6府県の知事の異論がなければ凍結が解除される見込み。

 大阪府の森岡武一・都市整備部長は会議で「府の専門部会で大戸川ダムは大阪府域での治水効果があるとされた」と容認の考えを表明した。そのうえで、今後の具体的なスケジュールや事業費を示すよう要望した。ダムの事業費は1080億円程度の見通し。地元自治体として大阪、京都、滋賀の3府県が3割を負担することになっている。費用が上振れすれば、3府県の負担が重くなる可能性もある。

 大戸川ダムは琵琶湖から発して淀川につながる瀬田川の支流、大戸川に国が計画する治水ダム。2008年に大阪、京都、滋賀、三重の4府県知事が建設の凍結を求める共通認識を示し、国が09年に建設を凍結した。19年に滋賀県の三日月大造知事が洪水対策に一定の効果があるとして建設容認に転じた。今年に入って大阪府と京都府の両知事も容認の考えを示した。

 近畿地方整備局は20年7月の調整会議で、河川整備計画を見直す場合の目標や今後の整備内容・優先順位の考え方に加え、大戸川ダムが完成した場合の治水効果を提示。これまで6府県が内容を検討していた。