利根川荒川フルプランの変更

 さる5月28日に「利根川水系及び荒川水系における水資源開発基本計画」(利根川荒川フルプラン)が変更され、下記の通り、国土交通省のホームページに掲載されました。

★国土交通省ホームページより、報道発表資料
 「利根川水系及び荒川水系における水資源開発基本計画」の変更  ~需要主導型の「水資源開発の促進」からリスク管理型の「水の安定供給」へ~

 水資源開発基本計画(フルプラン)とは、国土交通大臣が水資源開発促進法に基づいて決定する水需給計画のことです。 現在、フルプランが定められている水系は、利根川、荒川、豊川、木曽川、淀川、吉野川、筑後川の7つの水系です。関東地方を流れる利根川と荒川に限っては、2水系を合わせて1つのフルプランとして定めています。
(参考ページ➡国土交通省HP 「水資源開発基本計画(フルプラン)」

 フルプランは都市人口が増加した時代の社会情勢にこたえるために定められたもので、都市用水の供給などを目的としたダム計画の上位計画となります。最初のフルプランは1962年に決定され、その後、4回変更されてきました。八ッ場ダム計画は水没住民の反対運動が盛んだった1976年に利根川荒川の第三次フルプランに位置づけられ、その後、水需要が減少し、特に1990年代以降は必要性が年々希薄になっていきましたが、利根川水系(首都圏)の水需給計画の一環であることを理由に推進されました。
 八ッ場ダムの建設後も、それぞれの水系のフルプランを根拠に、、思川開発、霞ケ浦導水事業(以上、利根川水系)、設楽ダム(豊川水系)、川上ダム、天ヶ瀬ダム再開発(以上、淀川水系)、小石原川ダム(筑後川水系)といった水資源開発事業が進められ、木曽川水系連絡導水路が計画されています。

★★利根川荒川フルプランのエリア。戦後、多くの水源開発事業が行われてきた。国交省の報道発表資料、新たな計画の概要(利根川水系及び荒川水系における水資源開発基本計画)の3ページ目。

 しかし、水需要が減少の一途を辿り、水あまりが一層進行していく時代において水需給計画で新規のダム等水資源開発事業を位置づけることが困難になってきたため、各水系のフルプランは2015年度目標のままになっていました。

 フルプランは水資源開発促進法の目的に書かれているように、「産業の開発又は発展及び都市人口の増加に伴い用水を必要とする地域に対する水の供給を確保するため」に策定されるものであり、水道用水・工業用水の需要が減少傾向に転じた時点で、その役割は終わっているのですから、水資源開発促進法とともに、7指定水系のフルプランは廃止されるべきものです。しかし、国土交通省は水資源部の組織を維持するため、目的を失ったフルプランの改定作業が行っています。

 今回の国交省の報道発表は、利根川・荒川水系について2030年度目標のフルプランが策定されたことを公表したものです。
 これから、豊川・木曽川・淀川・筑後川の指定水系についてもフルプランの改定が行われることになっています(新規の事業がない吉野川水系は2019年4月に形だけの計画を策定)。

 国土交通省のホームページに掲載されている「新たな計画のポイント」によれば、これまでの計画では「比較的発生頻度が高い渇水時を基準に水の安定供給を目指してきた」けれども、新しい計画ではこの方針を転換し、「供給の目標に、発生頻度は低いものの水供給に影響が大きいリスク(危機的な渇水等)を追加」し、「危機的な渇水、大規模自然災害、老朽化に伴う大規模な事故に対しても新たに目標を設定」しています。要するに、これまでの方針では新規のダム等事業の必要性を訴えることが難しいので、継続中の事業を推進するために、特別な渇水や大規模自然災害、老朽化に伴う大規模事故なども想定して水需要を膨らませるということです。