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米軍基地から放出された高濃度のPFOS検出

 沖縄県では、米軍基地から放出された有機フッ素化合物「PFOS(ピーフォス)」などが水道を汚染する問題が発生しています。米軍基地による水質汚染は首都・東京でも発生しています。
 水道は生活するうえで最も重要なライフラインであり、水環境の汚染は命を脅かします。自民党はかつての民主党政権を「危機管理能力の欠如」、「外交能力の欠如」とこき下ろしてきましたが、自公政権が国民や国土を守るための危機管理能力、外交能力があるとはとても言えません。

◆2021年9月17日 朝日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/4d2509b4f3d83c549530f9efd6d821242c255ad3
ー基地近くで高濃度のPFOS、井戸の利用一部停止 沖縄・金武町ー

 沖縄県金武町(きんちょう)で、井戸から発がん性が疑われる有機フッ素化合物の「PFOS(ピーフォス)」などが高濃度で検出され、昨年6月から水道水への利用を一部停止していることが町への取材でわかった。町内の井戸9地点のうち3地点で国の目安を上回り、最大で8倍超だった。

 PFOSなどの含有量について国が設ける地下水などの水質管理の目安(暫定目標値)は、1リットルあたり50ナノグラム以下。

 町は昨年6月、水道水に使う地下水の水源となる井戸9地点を調査。米海兵隊キャンプ・ハンセンから70メートルの地点で、目安の8・2倍にあたる410ナノグラムが検出された。米軍との関連は不明という。町は全ての水道水を、県が管理するダム水に切り替えることを検討している。

 井戸とは別に、河川や排水路の15地点を昨年8月から今年1月にかけて町が調べたところ、4地点で目安を超えた。最大で目安の3・3倍の165ナノグラムだった。町は、検出された排水路では、基地のある上流ほど濃度が高いとして、キャンプ・ハンセンから流れ出した可能性があるとみている。

 沖縄県内では米軍嘉手納基地周辺の河川などから高濃度でPFOSなどが検出され、国や県が米軍への立ち入り調査を求めたが拒まれ、原因特定に至っていない。(寺本大蔵)

◆2021年9月17日 時事通信
https://www.jiji.com/sp/article?k=2021091701171&g=pol
ー普天間汚染水、日本引き取り 処理費用9200万円も負担ー

 防衛省は17日、在日米軍が普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の貯水槽で保管している有毒物質「PFOS」を含む汚染水を引き取り処分することで日米両政府が合意したと発表した。9200万円と見込まれる費用は同省が負担する。

 PFOSは泡消火剤などに広く使われていたが、発がん性などが指摘され、日本では2010年4月に輸入・製造が原則禁止された。普天間飛行場でも以前使われていて、PFOSを含む汚染水が格納庫の地下にある貯水槽に残っている。米側によると、汚染水は36万リットル。

 雨水が流入すれば、貯水槽から汚染水があふれ出る恐れがある。米軍は先月26日、事前の了解なく汚染水を公共下水道に放出しており、日本政府は米側に抗議。日米両政府は、貯水槽への雨水の流入を防ぐための格納庫の補修に向けて協議する方針も確認した。

◆2021年9月21日 NHK沖縄
https://www3.nhk.or.jp/lnews/okinawa/20210921/5090015708.html
ー知事 PFOS含む汚水の保管状況 普天間以外でも立入調査をー

 アメリカ軍普天間基地で保管されている有機フッ素化合物を含む汚水について、日米両政府は日本側が処分することで合意しましたが、玉城知事は、ほかのアメリカ軍基地にも汚水が保管されているとして、立ち入り調査を求めていく考えを示しました。

アメリカ軍普天間基地で保管されている有機フッ素化合物のPFOSとPFOAを含む汚水について、政府は、今月17日、台風シーズンの緊急的な措置で日本側が引き取り、9200万円を負担して処分することなどで、アメリカ側と合意したと発表しました。

これについて玉城知事は、21日の県議会の代表質問で「沖縄県は、日米両政府に対し、PFOS等を含む水を基地の外に放出せず、焼却処理することなどを強く求めていたところで、今回の措置は一歩前進だ」と評価しました。

一方で、「在沖米軍施設には、依然としてPFOS等を含む汚染水が保管されていることから、米軍基地内への立ち入り調査を含め、引き続き、市町村とも連携しながら対応していく」と述べ、普天間基地だけでなく、嘉手納基地などへの立ち入り調査も求めていく考えを示しました。

◆2021年7月2日 文春オンライン
https://bunshun.jp/articles/-/46470
ー米軍・横田基地の「PFOS」による地下水汚染はなぜ放置されてきたのかー

 ごみを捨てても、壁を壊しても、もと通りにする必要はない。騒いでも、火事や事故を起こしても、まず責任は問われない。それでも、追い出されることはない――。
 これほどのやりたい放題が許される契約を結ぶとしたら、アパートの部屋を貸そうとする家主は現れないだろう。
 だが、そのありえない家主こそ、在日米軍に基地を提供している日本政府の姿なのだ、と沖縄選出の衆院議員、屋良朝博は言う。
「沖縄や東京の米軍基地で飲み水や地下水の汚染が見つかっても、事実上、放置されているのは日米地位協定のためです」

 日米地位協定は、日米安全保障条約に基づいて駐留する米軍の基地使用について定めているが、環境に直接かかわる条項はない。

 ただ、基地による環境汚染が繰り返されるため、2015年、環境補足協定が結ばれた。汚染があった場合に基地内に立ち入り、調査をできる仕組みが盛り込まれた。岸田文雄外相(当時)は「従来の運用改善とは異なり、歴史的な意義がある」と胸を張った。1960年以来、地位協定にからんで法的拘束力のある約束が結ばれたのは初めてだった。

環境補足協定第4条が基地内での調査を阻む
 しかし、実態はほとんど変わらなかった。
 有機フッ素化合物のPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸)による水質汚染が見つかった沖縄の嘉手納基地では、記録の残る2014年度以降、基地内にある井戸から、環境省の指針値の16倍を超える値が検出されている。

 それでも、米軍は嘉手納基地が汚染源と認めず、防衛省や沖縄県はいまだに基地内での調査ができていない。その理由を、屋良はこう説明する。
「環境補足協定には、日米間の取り決めが実質的に機能できないよう、ある条件が定められているんです」
 それが、基地内の立ち入りが認められる場合について定めた第4条だという。

〈環境に影響を及ぼす事故(漏出)が現に発生した場合〉
 つまり、調査が認められるのは、まさに目の前で有害物質が漏れ出ているときに限られているのだ。過去に引き起こされた汚染が明らかになっても対象とはならない。
 このため、環境補足協定が結ばれてから6年間で、立ち入り調査が実現したのは沖縄での2件にとどまる。

 昨年4月、普天間飛行場(宜野湾市)で、コロナ禍によるストレス発散のために米兵たちがバーベキューをしていると、近くの格納庫のセンサーが反応して泡消火剤が噴出した。綿菓子のような白い泡は基地外へ舞い出ると道路上を漂い、保育園の園庭をかすめ、近くの川面を白く覆った。多くの市民が現在進行形で目撃した事故で、初めて立ち入り調査が認められたのだった。

今年6月には、うるま市にある米陸軍の「貯油施設」から、最大で650ガロン(約2460リットル)が流出し、国と沖縄県が立ち入り調査に入った。

KISEという抜け道
 かつて防衛省で基地汚染に対応する環境対策室長をつとめた世一良幸によると、こうした「抜け道」は、米国の基本姿勢によるのだという。

〈known, imminent and substantial endangerment〉

「広く知られ」「差し迫った」「実質的に」脅威があるかどうかが、米軍が浄化の責任を負うかどうかを見極める物差しになっているというのだ。頭文字を取って「KISE」と呼ばれる。
 世一が注目するのは、最初の「K」、つまりknownという形容詞だ。裏を返せば、汚染が広く知られていなければ浄化しない、と読める。
「米軍は汚染浄化に取り組まないために、あえて調査しないこともできるということです。そこに日本側の判断は及びません」
 このため、在日米軍基地をめぐるさまざまな汚染が指摘されながらも、日本側の求める基地内への立ち入り調査や米軍による浄化はほとんど実現してこなかったのだ、という。

閉ざされた日米合同委員会
 環境省は、国内にある米軍基地内の水や大気などについて毎年、調べている。
 ところが、2014年度からは、それまで認められていた基地内での調査は行われなくなった。沖縄県が嘉手納基地内にある井戸群などで高濃度のPFOSを確認した翌年ということになる。
 立ち入りが認められなくなった理由について、環境省は「米側との協議内容は公表できない」と説明を拒んでいる。
 背景に、基地に由来する環境汚染を扱う日米合同委員会の閉鎖性がある、と世一は指摘する。米軍幹部と日本の外務・防衛などの官僚が日米地位協定の運用について協議する機関だ。

 その日米合同委員会の議事録にはこう書かれている。
〈双方の合意がない限り公表されない〉

 すべては水面下で話し合われ、記録はあかされず、なにが議題に上ったのかさえわからない。横田基地にからむ地下水汚染についても闇の中だ。世一は言う。
「事実上、ブラックボックスになっているのです」

横田基地のほかにも
 ところで、東京・多摩地区の汚染源はじつは、横田基地だけではなかった。

 東京都の調査で、すでに触れた立川市、府中市、国分寺市、国立市以外にも、小平市や東村山市、東久留米市、狛江市、西東京市、小金井市、調布市などで個人が所有する飲用井戸から高濃度の有機フッ素化合物が検出されており、実態はより深刻だ。

 にもかかわらず、東京都や環境省に汚染源を調べようとする動きはない。土壌汚染対策法で、健康被害が生ずるおそれがある場合は(自治体が)調査を求めることができるとされているものの、有機フッ素化合物による健康への影響については世界的な評価が定まっていないことを理由に実施されていない。

 有機フッ素化合物汚染の問題に取り組む弁護士の中下裕子はこう話す。

「東京都は高濃度の汚染物質が出たとして地下水源からの取水を止めたものの、このまま蓋をしたままなら、真の解決とはいえません。汚染源を突き止めて、地下水を浄化させ、再びきれいな地下水を飲めるようにすることが行政の責任ではないでしょうか」

 日本だけがこのまま「永遠の化学物質」を放置しつづけるのか
 さらに、健康への影響も気がかりだ。

 東京都水道局が有機フッ素化合物についての水質調査を始めた2005年度以降、2019年度に一部の浄水所で取水を止めるまで、高濃度の地下水が飲み水として家庭に送られてきた。汚染のもっともひどい府中武蔵台浄水所では15年連続で年間の最大値が100ナノグラムを超えていた。おそらく、それ以前も高濃度がつづいていたと考えられる。しかも、測定方法が古いため、実際の濃度はもっと高い。

 東京都環境科学研究所の調査では、1950年代から東京湾の海底の地層でPFOSが確認されている。そうなると、多摩地区の一部の住民たちは約半世紀にわたって、高濃度の有機フッ素化合物を含んだ水を飲んできたことになる。

 このため、中下が代表をつとめるNPO「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」は昨年夏、地下水源からの取水を止めた府中武蔵台と東恋ケ窪の両浄水所の一帯で、住民たちの血液検査をした。すると、22人中5人から「高い」とされる数値が出た。

「国や東京都は、有機フッ素化合物による健康への影響については世界的な評価が定まっていないことを理由に、健康調査をしないというが、逆ではないですか。健康への影響がわからないからこそ、調査すべきではないでしょうか」(同前)

 有機フッ素化合物はPFOSやPFOAのほかにも数千種類あるとされ、規制対象外の代替物質はいまも使われている。すでに環境問題だけでなく、健康問題の疑いも濃い。それだけに、どれほど体内に取り込まれ、血液中に蓄積されているかを調べなければ、実態はつかめない。

 体内汚染を調べる血液検査の実施などを盛り込んだ「環境安全基本法」の制定に向けて、中下たちは署名活動をはじめている。

 の向こうでは、アメリカで規制強化を掲げるバイデン氏が大統領に選ばれるなど、PFAS(有機フッ素化合物の総称)への注目が高まっている。

 一方、東京都をはじめ環境省、厚労省、防衛省は、汚染が明らかになっても静観をつづけている。日本だけがこのまま、「永遠の化学物質」を放置しつづけるのか。

文中一部敬称略/写真=諸永裕司