流水型ダムで観光推進 、熊本県の五木村振興計画案

 熊本県は流水型川辺川ダムの予定地、五木村について新た振興計画の案を取りまとめ、蒲島郁夫知事が明日5日、村を訪れ、住民対象の説明会を開くとのことです。
 その記事を読むと、施設整備などいろいろと盛り込んでいるようですが、地元紙では財源の曖昧さやダム中止を前提に熊本県が水没地に整備した施設への対応が問題視されています。

 紙面で触れられていない大きな問題が流水型を選択することになった川辺川ダムの貯水域です。
 五木村のかつての中心部であった貯水域は、洪水時のみ貯水するため、通常は水が貯まっていない状態ですが利活用は不可能です。広い貯水域には洪水のたびに上流から流れてきた土砂や土石が堆積し、時間の経過とともに変貌していきます。
 既設の流水型ダムの貯水域の状況を見た人が、「イノシシたちの運動場のような風景になっている」と表現していますが、川辺川ダムの貯水容量は八ッ場ダムより大きく、既設の流水型ダムの20倍近くと、はるかに大規模です。

 旧川辺川ダム計画では、八ッ場ダムと同様、水没住民の移転代替地を水没予定地の周辺に造成しましたが、八ッ場と同様、大半の住民が地域外へ転出し、急激な人口減少と高齢化に直面しています。地域振興は住民あってこそですが、はたしてダム完成時、どれだけの住民が残っているのでしょうか? 川辺川の新ダム計画の完成予定は2035年度です。

◆2022年6月4日 熊本日日新聞
ー流水型ダムで観光推進 県の五木村振興計画案ー

 熊本県は3日までに、新たな五木村振興計画の概要案を取りまとめた。国が川辺川に計画している「流水型ダムを生かした振興」と「医療・福祉・教育の推進」など四つの方向性を列挙。それぞれに具体策のイメージを盛り込んだ。蒲島郁夫知事が5日に村を訪れ、住民に説明する。

 球磨川流域で甚大な被害をもたらした2020年7月豪雨に伴う治水対策として、国は球磨川支流の川辺川に流水型ダムを建設する予定。これによって、貯水時に旧中心部の水没も想定される五木村の振興策について、県が検討を進めている。

 概要案は①清流川辺川と流水型ダムを生かした新たな振興②生涯住み続けられる医療・福祉・教育の推進③持続可能な産業と雇用の場の創出④安全・安心を確保する生活基盤の整備-の四つの方向性を明示した。

 イメージする具体策は他の自治体の先行事例も参考にして盛り込んだ。①ではダムの見学ツアー、体験型レジャー施設整備、道の駅「子守唄の里五木」の機能強化などを列挙。②には、オンライン診療、ドローンを使った買い物支援、自動運転バス、情報通信技術(ICT)教育を並べた。③では林業と観光産業の融合などを推し進め、④では第5世代(5G)移動通信システム環境や道路の整備に力を入れる、とした。

 こうした振興策については、財源が具体的に明記されておらず、すべてを実現するのは困難だ。ダムの貯水時に水没することも見込まれる旧中心部の宿泊施設「渓流ヴィラITSUKI」や公園「五木源[ごきげん]パーク」についても「新たな対応が必要」とするにとどめ、具体策に触れていない。

 県は住民説明会での意見を参考にして、実現性も加味しながら計画の中身を国と村とともに精査。今秋をめどに正式に策定する。

 五木村は下流域の洪水対策を目的とした旧川辺川ダム計画を受け、旧中心部の集団移転に応じた。蒲島知事が08年に計画を白紙撤回し、「ダムなし」が前提の村づくりを余儀なくされた。20年7月豪雨によって、県や国は流水型ダムの建設にかじを切り、村は再びダム問題に直面している。(内田裕之、中村勝洋)

◆2022年5月24日 西日本新聞
ーダム容認へ方針転換の熊本県知事 来月5日、五木村民に直接説明ー

 2020年の熊本豪雨で氾濫した球磨川流域の治水策として、支流川辺川に整備予定の流水型ダムを含む「緑の流域治水」について、熊本県の蒲島郁夫知事は6月5日、ダム貯水で旧中心部が水没する五木村を訪問し、ダム容認への方針転換の経緯や、村の今後の振興策を村民に直接説明する場を初めて設ける。

 村民説明会は午前と午後の2回開催し、蒲島氏がダム容認を政治判断した経緯を直接説明する。産業や観光、ハード整備などを含めた村の振興策についても方向性を示し、村民の意見や提案を聴く。

 旧川辺川ダム計画で、村民は下流の安全を考慮して水没予定地の集落移転に苦渋の決断で応じたが、08年に蒲島氏が計画の「白紙撤回」を表明。その後、村の旧中心部の水没予定地には宿泊やレジャー施設ができ、村振興の拠点としてきた。

 だが、豪雨後の20年11月、蒲島氏は「治水の選択肢からダムを外すことはできない」として流水型ダム容認へと方針転換。ダムを巡って翻弄(ほんろう)されてきた村民からは説明を求める声が上がっていた。7月にはダム建設予定地の相良村でも説明会を開く。 (古川努)

◆2022年6月3日 毎日新聞熊本版
ーダム反対請願 五木村に提出 川辺川ー

 熊本県の球磨川流域の住民らでつくる「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」が2日、同県五木村役場を訪れ、国土交通省が球磨川の最大の支流・川辺川に建設を決めた新たなダムについて、ダムを前提としない村づくりの継続を求める請願書を村長と村議会あてに提出した。

 国交省は2020年の九州豪雨で氾濫した球磨川の治水対策として、川辺川での流水型ダムの建設計画を進めている。

 5日には蒲島郁夫知事が村を訪れ、村民向けにダムを前提とした振興計画を説明する予定で、市民の会は請願書で「これまでのあらゆる地域振興の取り組みが水泡に帰す」「ダム賛否でコミュニティーが分断される」などと改めて反対を訴えた。受け取った村の担当者は「村長と議会にしっかりと伝えたい」と述べた。【野呂賢治】

◆2022年6月5日 共同通信
ーダム水没の村振興方針示す、熊本ー

 熊本県は5日、2020年7月の豪雨で氾濫した球磨川支流の川辺川でのダム建設に関し、水没予定地を抱える五木村の振興方針を公表した。ダム見学など観光振興や福祉の充実を柱とした。

 同日、住民説明会が開かれ、出席した蒲島郁夫知事は「村を(ダム計画で)翻弄させたことをあらためておわびする。安心して暮らせる、持続可能な村を目指したい」と話した。

 県は振興策の例として、ダム工事の一般公開や、アウトドア施設の設置を提示。オンライン診療や小型無人機ドローンによる宅配など、先端技術を取り入れた福祉の充実も盛り込んだ。国と県、村で協議し、今秋にも村振興計画を策定するとした。