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川辺川ダムの環境影響評価準備レポート、五木村などで国の説明会開始 

 国の川辺川ダム計画が急ピッチで進められています。
 熊本県の球磨川の最大支流である川辺川は、国土交通省みずからが17年連続で”日本一の清流”と認定しているだけに、ダム建設が河川環境や流域住民の暮らしに及ぼす影響が危惧されています。国は2020年の球磨川水害後、被災地の混乱を利用して復活したダム計画をスムーズに進めるため、ダム事業の手順を急ピッチで進めています。
 説明会を開催中の環境影響評価の準備レポートは、環境アセスメント法によれば住民の意見を反映させることが可能な最後の段階とのことですが、現状のダム行政ではダムに反対する住民の意見が反映される可能性はありません。報道では流域住民の不満の声がそれなりに取り上げられています。

◆2023年12月16日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/1264364
ー熊本・川辺川の流水型ダム「準備レポート」、五木村と相良村で住民説明会 21日までに7市町村でー

 国土交通省は16日、熊本県の球磨川治水のため支流川辺川に建設する流水型ダムが環境に及ぼす影響を調査、予測した「準備レポート」の住民説明会を始めた。五木村と相良村を皮切りに、21日まで7市町村で開く。

 国交省は2020年の熊本豪雨を受け、ダム建設を計画した。レポートは環境影響評価(アセスメント)法に準じて4段階あり、準備レポートは第3段階に相当。住民の意見を反映させる最後の機会となる。

 水没予定地がある五木村では住民ら33人、建設地の相良村では26人が参加。国交省の担当者が模型を使って流水型ダムの治水効果を説明し、川辺川ダム砂防事務所の齋藤正徳所長は「今後もダムで水をためた場合の環境影響の最小化を目指したい」と述べた。

 住民からは「アユはどのくらい遡上[そじょう]できるのか」「ダム完成後10年、20年後に起きる恐れのある想定外の事態にどう対応するか」などの声が上がった。

 準備レポートは試験湛水[たんすい]や洪水に伴う貯水のほか、建設工事が環境に与える影響を動植物や景観など9要素15項目にわたって予測。試験湛水時に濁水がたまる場合は、放流の勢いを弱めるといった環境保全措置をまとめた。

 アユの産卵や生育状況などは、ダム完成後も引き続き調査するとした。これらをまとめた準備レポートは約5千ページに上るが、説明会では30ページ程度のパンフレットに要約して住民らに示した。

 国交省は準備レポートに対する意見を来年1月11日まで募り、最終段階の環境影響評価レポートに反映するかどうか検討する。(川野千尋)

 ◆「アユの遡上は?」「濁り対策を」 住民から不安視する声も

 流水型ダムが建設されたら、清流川辺川はどうなるのか。16日、調査・予測についてまとめた「準備レポート」の住民説明会が五木村と相良村を皮切りに始まった。質疑応答で住民らは次々と挙手。「自然は本当に守られるのか」と不安視する声も聞かれた。

 五木村小椎葉地区の男性(68)は「約110メートルに及ぶダム放水路のトンネルや、建設工事中のさらに長い仮排水路の中をアユが遡上[そじょう]するというが、本当なのか」と疑問視。アユ遡上の根拠を問う声は、その後も相次いだ。

 国交省の担当者は「専門家らの委員会では物理的、条件的には遡上できるとされた。実際の動きは今後モニタリングする」と説明。「もし工事中に遡上できない例が確認された場合は、上流へのすくい上げなども考える」と述べた。

 土砂やヘドロの影響を心配する宮園地区の70代男性は「濁水処理施設を造ってほしい」と求めたものの、担当者は「工事中は濁水処理施設を使うが、完成後に稼働させる計画はない」。ダム内の土砂堆積や、ダム建設に必要なコンクリートの材料を採取する周辺の山への影響を心配する意見も出た。

 平野地区の男性(67)は「レポートは環境への影響は少ないとしているが、前提がダムありきになっていないか」と強調。「ダムができてから10年、20年が経過し、流域の地形やダムの状態が変わっていく中で『想定外だった』ということがないようにしてほしい」と注文した。

 一方、相良村土地改良区理事長の男性(72)はダム上流の山地にある砂防施設について「既に土砂があふれている」と指摘。「大雨で土砂や流木が大量にダムに流入し、水が濁ったり、ダムが詰まったりする恐れがある。農業も漁業も川辺川の水で成り立っている相良村では深刻な問題だ」と訴えた。

 相良村の川漁師の男性(53)は「今夏は川辺川の濁りが強い。アユは細くて泥臭く、全く売れなかった。アユは想像以上に濁りに弱い。対策を徹底してほしい」と求めた。(川野千尋、堀江利雅)

◆2023年12月17日 読売新聞熊本版
https://www.yomiuri.co.jp/local/kumamoto/news/20231216-OYTNT50144/
ー国の住民説明会開始 川辺川・流水型ダム 五木村などでー

 球磨川の支流・川辺川で国が計画する流水型ダムを巡るこれまでの調査結果や環境保全対策をまとめた「環境影響評価準備リポート」について、国土交通省は16日、関係する7市町村への住民説明会を始めた。21日まで各地で開く。

 水没予定地を抱える五木村では、村内外から33人が参加した。同省川辺川ダム砂防事務所の斎藤正徳所長が「地域の環境を良くし、環境への影響を最小化していきたい」とあいさつ。ダムの模型を用いて効果や役割を示し、準備リポートの概要を説明した。

 質疑応答では、「5年後、10年後の変化を継続監視するのか」「希望的観測ではないか」といった不安や疑問の声が相次いだ。農業黒木一秀さん(67)は「限られた時間だったが、五木の宝である自然を大事にしてほしいとの思いで質問した」と語った。16日は建設予定地がある相良村でも説明会があった。

 準備リポートは環境影響評価(環境アセスメント)法の手続きに準じて作成。4段階のうち、3段階目に相当し、住民の意見を反映するのは最後となる。今後、知事や国交省の意見も踏まえ、「環境影響評価リポート」を完成させる。

◆2023年12月15日 NHK熊本放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20231215/5000020886.html
ー球磨川の治水対策 流水型ダムの流域環境影響で説明会開催へー

 3年前の豪雨で氾濫した球磨川の治水対策で建設される流水型ダムで、流域の環境にどのような影響が出るかをまとめた国の「レポート」の説明会が、16日から五木村などで開かれます。

 球磨川の支流、川辺川に建設される流水型ダムをめぐっては、工事を実施する国が、流域の環境にどのような影響が出るかの調査や予測などを行うことになっています。

 国は先月、予測などをまとめた「環境影響評価準備レポート」を公表し、熊本県庁など県内22か所と県外1か所で、一般への縦覧が行われています。

 縦覧は今月28日までとなっていて、16日から21日にかけて、五木村などで国によるレポートの説明会が開かれる予定です。