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奥利根自然センター、倉渕ダムと戸倉ダムの事業再開について意見書提出

 群馬県高崎市に計画された倉渕ダムと片品村に計画された戸倉ダムは、20年以上前に不要であるとして中止されましたが、今年になって国が事業を再開する方針であることが明らかになりました。この問題について、利根川上流の奥利根地域の自然保護に取り組んできたNPO法人、奥利根自然センターが国土交通省に対して事業再開に反対する意見書を提出したとのことです。

➡「過去に中止となった倉渕ダム、戸倉ダム計画の事業再開に関する意見書 」

 倉渕ダム、戸倉ダムの計画地は、いずれも鳥類の生態系の頂点に位置するクマタカなどの猛禽類の営巣地であることが確認されてきました。大規模公共事業が次々と進められてきた結果、利根川水系上流域の群馬県においても、クマタカなどが生息できる豊かな自然環境が残されているところは数えるほどしかなく、ダム建設によるさらなる自然破壊が強く危惧されるところです。戸倉ダムが計画されている地域をフィールドとする専門家らによる意見に耳を傾けたいと思います。

 なお奥利根自然センターでは、11月に戸倉ダムの水没地域を対象としたフィールドワークも企画しています。
 ➡「第15回奥利根フィールドワークー片品川上流域」
 
 上記の意見書の本文を以下に転載させていただきます。
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 2026 年 9 月 24 日

 国土交通省関東地方整備局・河川部長 殿

               特定非営利活動法人 奥利根自然センター
               理事長 横山隆一

 過去に中止となった倉渕ダム、戸倉ダム計画の事業再開に関する意見書

 日頃より河川環境保全へのご尽力、深謝申し上げます。
 2026 年 6 月、上毛新聞の社説に、過去に建設中止となった倉渕ダム(群馬県高崎市)と戸倉ダム(同片品村)について、国土交通省が事業再開を視野に現地調査に着手するという記事が掲載されました。理由としては、豪雨災害が頻発する中、ダムの治水効果に対する期待の高まりが背景にあるとのこと。仮に事業を再開するならば、効果や環境負荷などを多角的に検証することになるとされ、そのための委員会もできていると聞きます。
 倉渕ダムは、県が計画し 1990 年に建設が始まったものの、2003 年に財政状況や将来の水需要減などを理由に凍結、2010 年に中止されました。戸倉ダムは水資源開発公団(現・独立行政法人 水資源機構)が計画し、1987 年に建設に着手。しかし、3都県が水需要の将来予測を見直して撤退したことから、2003 年に中止となったものです。
 この中止となった二つのダム計画に対して、高崎市と片品村は 2026 年 4 月に、国交相に現地調査を要請しており、貴省は本年度中に地元に調査事業の説明をした上で、計画地周辺の土地利用状況を確認するとしています。
 しかし、昨今の月平均の降雨量の二倍以上もの量の雨が、一晩のうちに降るというような未曽有の豪雨現象に対して、満水になれば豪雨の中でも放流しなければならないというダムで食い止めるという発想は、無理があると思われます。むしろ、ハザードマップの精度の向上、甚大な被害想定地からの住居の移転の促進、堤防の強化、的確な事前予報と迅速な避難体制の構築等に努力の方向を向けるべきではないかと考えます。                        

 倉渕ダムの旧計画地には、種の保存法の政令指定種(絶滅危惧種、ⅠB 類)とされた希少猛禽類のクマタカの営巣地があり、地域の自然保護グループが計画再開に対し反対する意思表示をされています。このクマタカの当時の調査活動に、当会も協力いたしました。
 戸倉ダムについても、過去の計画推進時に、同じくクマタカの複数の営巣地が旧計画地域内に発見され、地域の自然保護グループの反対意見が新聞記事として掲載されたほか、尾瀬の自然保護と希少猛禽類の保護活動に永年取り組む、東京に本部を置く(公財)日本自然保護協会から水資源開発公団に対し、反対意見の表明もあったことが中止に直結したものと理解しています。
 私どもは、奥利根地域の自然保護を目的とする団体で、戸倉ダムの旧計画地は片品川上流部の奥利根地域の重要な一部となっています。また、本地域は尾瀬国立公園の第三種特別地域の中にある美しい渓流環境であり、その一帯には、この地域の太古からの自然の歴史がわかるさまざまな地質構造がみられる露頭等があり、重要な自然誌教育、環境教育の場にもなっています。本年 11 月には、この地域での自然誌学習のための当会のフィールドワークも計画しています。
 さらに、この場所の現在のクマタカの生息・繁殖状況は不明ですが、この希少猛禽類は留鳥であり定住性の極めて高い生物種であるため、現在も旧計画地一帯は繁殖地となり続けているものと考えられます。
 このような場所でダム計画を進めれば、これらの自然資産は失われるものと考えられます。
 以上のことから、国土交通省関東地方整備局河川部におかれては、倉渕ダム計画と戸倉ダム計画の双方について、旧計画地一帯での計画再開は行わないよう、強く要請致します。
 また、もし自然環境調査を行うのであれば、河川・渓流環境に生きる生物群集への影響、希少猛禽類クマタカの繁殖をはじめとする希少野生生物への影響、地形地質を含む自然誌・自然史の教育資源に対する影響に関して、精度の高い環境影響評価を行うべきであることを申し述べます。

           連絡先・・・〒379-1314 群馬県利根郡みなかみ町下津 2953-2
           特定非営利活動法人 奥利根自然センター
           理事/事務局長・松井孝夫
           携帯電話  (以下略)