八ッ場ダムの次に建設が進められてきた利根川水系の南摩ダムですが、工期延長と事業費増額が必要となり、8度目の計画変更を行うとのニュースです。
南摩ダムは小さな南摩川の水だけでは貯水容量を満たすことができず、別の複数の河川から水を運ぶ導水路事業と一体となっており、事業全体を思川開発事業と呼ぶ独立行政法人・水資源機構のダムです。
右図=水資源機構・思川開発建設所ホームページより
事業主体の水資源機構は、都市の水需要が右肩上がりであった時代に水資源開発を目的として設立された水資源開発公団を前身とする組織ですから、南摩ダムも「都市用水の供給」が主目的です。今では水需要が低迷し、必要性は皆無ですが、関連事業が増えれば増えるほど事業規模が大きくなり、事業主体にとって望ましいのは八ッ場ダムと同じです。
ダム事業に参画している栃木県の自治体では南摩ダムの開発水を購入しなければならず、水道事業でこれまで利用してきた安くて水質の良い地下水を切り捨てなければなりません。これに反対する市民運動がありますが、このダム事業には以下の記事にもあるように栃木県のほか、茨城県の古河市や五霞町、埼玉県、千葉県の北千葉広域水道事業団も利根川水系つながりで参画しています。ダム事業と水道事業の関係は、ほとんどの自治体で住民の知らぬ間に結び付けられていきます。
◆2026年8月8日 茨城新聞
https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=1786108291275500
ー南摩ダム、工期2年延長 事業費95億円増 茨城・古河市、五霞町負担も 栃木・鹿沼ー
本年度中に完成予定だった南摩ダム(栃木県鹿沼市)の工期が2年延長され、運用開始は2029年度にずれ込む見通しとなったことが7日までに、分かった。事業主体の水資源機構(埼玉県さいたま市)によると、事業実施計画の変更が6日付で国に認可された。工期延長は軟弱地盤への対応などが必要になったためで、総事業費も約95億円増加する。これに伴い、同ダムから水道水の供給を受ける予定の茨城県古河市や五霞町などの負担もそれぞれ数億円単位で増加する見込みだ。
事業実施計画の変更は24年夏に続き8回目。山間部にあるダムと近隣の河川を結ぶ地下水路(送水路)の工事で、想定とは異なる軟弱な地盤が見つかり、対応を迫られたことが主な要因だ。追加工事に必要な資材費や工賃、物価上昇の影響もあり、総事業費は従来の約2100億円から約2195億円に膨らむ。
ダムは高さ86.5メートル、総貯水容量約5100万立方メートル。利根川流域の治水とともに、都市用水の安定供給が期待される。ダム本体は25年8月にすでに完成し、試験湛水(たんすい)も行われていた。
水道水の供給予定先は古河市や五霞町のほか、栃木県や同県鹿沼、小山両市、埼玉県、千葉県の北千葉広域水道事業団の7団体。ダムの運用開始後、取水量などに応じて事業費の負担が求められる。
◆2026年7月28日 下野新聞
https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/1392829
ー論説 【思川開発工期延長】水道供給計画策定急げー
鹿沼市で試験湛水中の南摩ダムを中心とした思川開発事業で、事業主体の水資源機構は本年度の工事完了の予定を2年延長した。実際の運用は2029年度となる見通し。軟弱地盤に対応する工事が発生したためで、これに伴い追加費用は約95億円増額となる。総事業費は約2195億円となった。
同事業は23年にも物価高騰などを理由に約200億円の工事費が上乗せされたばかりだ。本県を含む利根川流域の関係5都県は同意はしたものの、徹底的なコスト縮減を求めた。事業費を負担する以上、当然の要求である。
その上で県に求めたいのは、関係自治体への水道用水供給計画の早期策定だ。ダム本体が完成したのに、いまだ事務レベルでの協議すら始まっていないのはどういうことか。ダムによる水道用水が本当に必要だったのか、疑わざるを得ない。
南摩ダムの利水計画には県と小山、鹿沼両市のほか茨城県古河市と五霞町、埼玉県、千葉県の北千葉広域水道企業団が参画している。このうち県は栃木、下野、壬生、野木の4市町に水道用水を「卸売り」することになっている。
野木町を除く3市町は、水道水源を100%地下水に頼っている。県南部では地盤沈下が頻発した時期があり、県は「地下水と表流水のバランス確保」などをダム事業への参画の理由に挙げた。
水道用水の需要は人口減少や節水機器の普及で、頭打ちの傾向にある。地下水から表流水への転換は、新たな取水施設の建設などを伴う。旧民主党政権下で事業が一時凍結となったこともあって、各市町の機運は高まらなかった。
それを割り引いたとしても、16年には事業継続が決まっている。いまだに水道用水供給計画が入り口にも達していない理由にはならない。
思川開発事業の機能は大きく分けて治水と利水の二つある。今回の工事費増額分約95億円のうち、県の負担額は利水分だけでも数億円規模の増額になると推定される。4市町も応分の負担が求められよう。独自に参画している小山、鹿沼両市も同様である。
直ちに水道料金にはね返ることはないとしても、将来の重しになることは避けられない。ダムは既に完成しており、もはや後戻りはできない。賢く使い、後世の負担を軽くすることが県の役目である。