四国電力の小見野々ダム、国が下流に移す再開発事業着手、2038年度完成予定

 徳島県の那賀川では、2020年度から洪水調節を目的に国直轄で小見野々(こみのの)ダム再開発事業が始まります。小見野々ダムは四国電力が1968年に完成させた水力発電専用ダムです。
 https://www.yonden.co.jp/energy/p_station/hydro/dam_07.html

 新たな事業は、小見野々ダムを下流側に移設して、洪水調節容量を設けるというものです。完成予定は2038年度ですから、気が遠くなるような先の話です。予算は約500億円の予定ですが、これまでのダム事業の例に倣えば、工期延長、事業費増大の可能性が大いにあります。

 小見野々ダム再開発事業(国土交通省 ダム事業の新規事業採択時評価 説明資料)
 https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/r-jigyouhyouka/dai13kai/pdf/6-1.shiryou.pdf 

 那賀川の上流では、かつて国の細川内ダム計画がありましたが(1972年事業開始)、ダム建設地の木頭村(現・那珂町)の藤田恵村長が2000年に中止に追い込みました。林業の村であった木頭村で生まれ育った藤田恵氏は、現在、水源開発問題全国連絡会の顧問を務めており、治山をおろそかにした戦後の治水政策の根本的な問題を訴え続けています。

 実際、那珂川の上流域では、土砂災害が多発しています。
 完成から半世紀経過している小見野々ダムは、総貯水容量1675万㎥ですが、上流から流れ込む土砂による堆砂量が935.5万㎥と、ダム計画で100年分と見込んでいる堆砂容量693.7万㎥をはるかに上回っています。(国交省開示資料「全国のダムの堆砂状況について」より)

 現状では、発電容量が堆砂によって年々失われているわけで、このままでは災害誘発の危険性があります。本来であれば四国電力がダム撤去を検討しなければならないところですが、国土交通省が小見野々ダム再開発事業を計画することで、四国電力には負担がかからず、国交省も新たなダム事業を獲得できることになります。両者にとってウィンウィンの事業ですが、果たしてこの事業が公金支出に値するのか、水害を軽減するために本当に必要な事業なのかが問われます。

 以下の飯泉・徳島県知事の会見を読むと、知事は小見野々ダム再編事業についての質問について、那珂川流域全体を考えて国と共にやっていきたいと答えており、特に長安口(ながやすぐち)ダムに言及しています。堆砂問題を抱えた長安口ダムは、2007年に県から国に管理が移管され、2012年度に始まった改造事業が今年度に完了する予定です。
 小見野々ダム再編事業は、那珂川流域全体を対象とした徳島県と国交省との駆け引きの中で浮上したようにも見えます。

★徳島県知事の記者会見(令和元年9月2日)より、「小見野々ダムについて(質疑)」
 
 狭い日本では、もはや新たなダム建設の適地が残されていませんから、ダム行政を維持していくために、これからも小見野々ダムのような既設ダムの再開発事業が計画されていくと思われます。

◆2019年9月25日 毎日新聞徳島版
https://mainichi.jp/articles/20190925/ddl/k36/040/458000c?fbclid=IwAR0NNtCu-QcPmy5voV0nutSHhC-sTWsg7UmFLchFHQ-2cQZmyRJ06IzllgU
ー那賀川の四電・小見野々ダム 下流に移し洪水調節を 国交省検討、2038年度完成ー

1万5900世帯「浸水ゼロに」
 那賀川で四国電力が管理する発電用の小見野々ダム(那賀町)について、国土交通省は現在より下流に移設して洪水調節機能を持たせる検討を始める。2020年度予算概算要求で、調査費など4億5000万円を計上した。新たに1100万トンの洪水調節容量を設ける構想で、河川改修や長安口ダム(同)改造と合わせ、下流域の浸水被害ゼロを目指す。【大坂和也】

 国交省によると、来年度は国の新規直轄事業として、治水計画の検討と地質調査などの実施計画の調査に取り組む。完成は38年度を目指しており、総事業費は約500億円を目安としている。

 総貯水容量は現在の1675万トンから2015万トンに増大させ、このうち、1100万トンは洪水調節容量とする見通し。下流移設後には、上流域に堆積(たいせき)した土砂を除去するとともに、大雨が予想される際は予備放流でダム湖の水位を下げられるようにする。

 移設先については、今後の調査を経て検討する。那賀川でのダムを巡っては、旧建設省が那賀川上流域の旧木頭村に計画した「細川内ダム」が地元の強い反発の末、中止に追い込まれた経緯もあるが、今回の移設では民家の水没などを回避できるとしている。

 現在の小見野々ダムは四国電力管理の発電専用で、洪水調節機能はない。移設などにより、那賀川水系河川整備計画で定められた、阿南市の古庄観測所での洪水時の目標流量(毎秒9700トン)を700トン削減し、9000トンに抑えられるという。

 これまで、那賀川流域は豪雨による洪水被害に再三見舞われてきた。堤防がない同流域の「無堤地区」は整備が進んでおり、移設などが実現すれば、約5550ヘクタールの浸水面積、約1万5900世帯の浸水世帯がそれぞれゼロになると見込んでいる。

 飯泉嘉門知事は記者会見で「那賀川全体の治水・利水を考えて、国と共にやっていきたい。那賀川の安全度を高める方向性は、那賀川流域の住民に理解していただけると考えている」と述べ、移設構想に期待感を示した。