八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム湖の観光船お披露目 今秋から運行予定

 八ッ場ダム事業ではダム湖観光を地域振興策として打ち出してきました。
 八ッ場ダムのある長野原町は、ダム湖観光の目玉として、八ッ場ダム三事業の一つ、利根川・荒川水源地域対策基金事業(総額178億円)を利用して水陸両用バス一台(写真右)と観光船二隻を購入。昨年7月に運行が開始された水陸両用バスは、マスコミ各社が大きく取り上げたこともあり、4か月間で約1万4000人の観光客が利用したとのことです。

 水陸両用バスは両脇が開いており、風の冷たい冬場は運行できず、4月~11月のみの運行です。そこで、冬場のダム湖観光として期待されているのが観光船ですが、今冬の渇水で水位が低かったことなどにより、昨年12月に予定していた運行開始が延期されてきました。
 今朝の上毛新聞が、観光船のお披露目となる進水式が昨日行われたことを報道しています。もっとも観光船の運行期間は11月~5月であるため、運行開始は今秋になるとのことです。
右写真=八ッ場林ふるさと公園にできた観光船の桟橋。2021年5月24日撮影。

 観光船については、上毛新聞が4月2日に「営業開始の見通しが立っていない」と報道しています。翌4月3日付の読売新聞群馬版も、長野原町が「2億5000万円を投じて観光船2隻と桟橋を整備」したと伝えています。(以下のページに記事掲載)

「八ッ場ダム運用一年、ダム観光の現状を伝える記事」

 以下の記事によれば、「ダム建設に伴う生活再建の一環で、船着き場の桟橋や艇庫も含め、利根川・荒川水源地域対策基金4億3000万円を充てた。」とのことです。
 観光船の購入や整備工事は、利根川荒川基金によって東京都、埼玉県、千葉県、茨城県、群馬県が負担しますが、今後の維持管理は長野原町が行っていかなければなりません。はたして長い目で見て、ダム湖観光は水没地域住民の生活再建の役に立つのでしょうか?

◆2021年5月22日 上毛新聞 (紙面より転載)
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/296768
ー八ッ場ダム湖の周遊船 秋就航へ進水式 長野原ー

 八ツ場ダム湖「八ツ場あがつま湖」を周遊する観光船を準備していた群馬県長野原町は21日、町内の八ツ場林ふるさと公園の船着き場で進水式を開いた。桟橋工事などに時間がかかり半年遅れのお披露目。今秋に運行を始め、閑散期となる冬の観光の目玉とする。

 運航期間は11月から翌年5月までを予定。洪水対策で水位を下げる夏場は運行できない。昨秋の営業開始を目指したが、桟橋工事の遅れや今冬の渇水に伴う水位低下のため湖面に船を浮かべられなかった。運行開始までに船体を検査し、運航ルートなどを決める。

 船は全長14.1メートル、幅3.5メートル、旅客定員32人で2隻用意した。1隻は団体客向けで対面テーブル席を備え、もう1隻は座席のみで個人客を想定している。

 道の駅を経営する八ツ場ふるさと館(同町林、篠原茂社長)が運営し、同社では既に5人が船舶の操縦免許を取得したという。

 進水式では関係者がテープカットを行った。萩原睦男町長は「生活再建事業の全てが出そろい、八ツ場エリアの船出と捉えている」と話し、篠原社長は「町や八ツ場観光のため頑張っていく」と強調した。

 ダム建設に伴う生活再建の一環で、船着き場の桟橋や艇庫も含め、利根川・荒川水源地域対策基金4億3000万円を充てた。(関坂典生)

—転載終わり—

写真=観光船の船着き場となる八ッ場林ふるさと公園(右手前)は、ダム湖周辺で最も地すべり対策が重視されてきた所の一つ。地盤の動きを監視するため、斜面には様々な計測器が設置されている。対岸の丸岩(正面奥)がよく見える。2021年5月3日撮影。