国が半世紀以上前に計画した熊本県、球磨川水系の川辺川ダム計画は、反対運動によって一旦は休止に追い込まれたものの、2020年7月の球磨川水害を機に復活しました。
川辺川ダムの問題に長年取り組んできた「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」(略称:手渡す会)では、ホームページをリニューアルして最新の情報を発信しています。
★清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会ホームページ
https://tewatasukai.com/
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球磨川流域では50人もの犠牲者が出た2020年の水害以降、「川辺川ダムができていなかったから水害が起きたのだ」という話が流布し、ネット上でも盛んに拡散されました。
わが国では、ダムによる河川環境の悪化は危惧されているものの、ダムの治水効果が実際より高く喧伝される傾向にあります。このため、ダムの是非を問う場合、環境保全か安全のどちらかを選ばなければならないと考えられがちです。その結果、大抵は「安全」のために「環境」はある程度目をつぶらざるを得ないとされます。
これに対して、「手渡す会」では、死者が出た被災地の現場を学識者らとともに徹底的に調査し、水の出方、水位が上がった時刻、犠牲者の状況などを聞き取りも含めて丹念に情報収集し、科学的な検証を行った結果をまとめ、このほど2冊のブックレットとして発行しました。
〇球磨川流域における温暖化に伴う豪雨災害に関する調査報告 ~「7.4球磨川豪雨災害」を問う~
https://tewatasukai.com/main/wp-content/uploads/2023/06/62f8ebebf77637c33cbe29c748c78186.pdf
「手渡す会」のホームページに公開されているこの報告書によれば、水害犠牲者のほとんどは、たとえ川辺川ダムができていたとしても助からなかったという結論に至ったということです。ダム推進の前提が科学的根拠を欠いたものであったとの告発です。本来は、このような調査を国交省や熊本県が行わなければならない筈ですが、国も県も調査を行う気配はありません。
国や県の様々な支援を受けなければならない被災地では、日々の生活に追われ、立ち止まって考える余裕がない、まさに”ショックドクトリン”さながらの状況で、巨大事業が推し進められようとしています。こうした中、流域の市民運動は懸命に活動し、現地からの情報を発信してくれています。
ダム計画は日本一の清流と言われる川辺川、そして本流の球磨川の河川環境に壊滅的なダメージを与える恐れがあります。地球温暖化により豪雨が頻発する中、治水対策は非常に重要です。果たして2035年完成予定の巨大ダムで流域の安全は守れるのでしょうか? 国土交通省と熊本県の発信する情報を鵜呑みにすることなく、「手渡す会」の情報を参照することが今後ますます重要になっていきます。