国土交通省は2000年代に中止された利根川水系の二つのダム計画を復活させようとしています。いずれのダムも当時、時代状況の変化によって不要になったという説明でしたが、今度は国交省の机上の計算によれば気候変動の時代に必要だという検討結果が導き出されました。水害の激甚化を受けた「治水強化」が建設の名目ですが、そこには上流ダムによる治水効果がごく限定的であるという事実がすっぽりと抜けています。
水資源機構の事業であった戸倉ダムは、尾瀬の玄関口である群馬県片品村が建設予定地です。反対運動はありませんでしたが、八ッ場ダムの事業費倍増と同時期に突然国が中止を発表しました。
旧倉渕村(現・群馬県高崎市倉渕町)に予定地がある倉渕ダムは、旧計画では県営ダムでした。高崎市民の反対運動が中止の大きな要因となったダムであり、今回もダム建設復活に疑問を抱く市民の活動が始まっています。倉渕町は高崎駅から車で約1時間、高崎駅と軽井沢駅の中間地点となる新幹線の安中榛名駅から車で約20分と、首都圏からも遠くない位置にあり、近年は有機農業を目指す県外の人々の移住先としても注目される地域です。
(写真右=倉渕ダムの水没予定地に残された旧ダム計画の看板)
国土交通省が利根川流域都県にダム計画の復活について説明した内容と関係都県の意見が以下の議事録に掲載されています。
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000939263.pdf
2026年1月15日
国土交通省関東地方整備局 河川会議室
利根川水系における治水計画関係都県会議 議事録
地元紙一面に掲載された記事をお知らせします。
◆2026年4月24日 上毛新聞 紙面より
ー倉渕 戸倉 中止2ダム再開へ調査 利根川ダム管理事務所 本年度、治水強化でー
治水機能の強化と安定した利水に向け、国土交通省利根川ダム統合管理事務所(群馬県前橋市)は2026年度、過去に建設中止となった倉渕ダム(高崎市)と戸倉ダム(片品村)の事業再開を視野に現地調査に着手する。両ダムは公共事業の見直し機運などを背景に2000年以降、相次いで中止が決まった。全国で大規模な水害が頻発する中、治水強化は喫緊の課題で、中止ダム再開に向けた事業が県内で動き出す。
同事務所によると、本県では倉渕、戸倉の両ダムの他、みなかみ町の川古ダムや、ともに沼田市の平川ダムと栗原川ダムなどの計画が過去に中止となっている。倉渕、戸倉の2ダムは用地買収や付け替え道路工事など他と比べて事業が進んでいたことから調査着手を優先した。本年度は地元に事業説明した上で、計画地の地形や、工作物など周辺の土地利用状況を確認する。
調査完了後、建設事業の予算化のための事業評価に入る予定。有識者に工期や概算工事費などを示し、妥当と判断されれば事業化する。同事務所は「本年度に行う調査は本格的な事業化に向けての最初のステップ」と説明。調査着手の時期については「慎重に判断したい」とした。
地元も国に事業再開を要望する。高崎市の市議会議長や副議長が今月2日、国土交通省を訪れ、金子恭之国交相に意見書を提出。倉渕ダムは治水と利水の両面で関東の住民に欠かせないとし、迅速な現地調査の実施を求めた。片品村長らも9日、金子国交相に戸倉ダムの総期の現地調査と建設再開を求める要望書を手渡した。
倉渕ダムは洪水調節と水道水確保などを目的に県が計画したが、水需要の伸び悩みなどを理由に03年に事業を凍結。15年に中止決定した。一方、戸倉ダムは片品皮で計画され、1987年に建設事業に着手。用地取得はほぼ完了し、工事用道路も一部できていた。だが、水道用水確保のため参画していた埼玉、千葉、東京の3都県が撤退。2003年に事業中止となった。
同事務所は利根川上流にある九つのダム(矢木沢、奈良俣、藤原、相俣、薗原、八ッ場、下久保、草木、渡良瀬貯水池)の統合管理を行っている。本年度当初予算で河川整備事業費などとして36億4600万円を確保。中止2ダムの調査など河川総合開発事業費に1億9500万円を充てる。
本年度はこの他、藤原ダム(みなかみ町)の施設改造に向けた詳細設計にも取り組む。柔軟な運用に向けて新たな放流設備の設置を進める相俣ダム(同町)の手法を念頭に、具体的な施工方法の検討やコンクリートの状況調査なども行う。28年度完了を目指す相俣ダムの改良には7億9千万円を計上した。
倉渕ダム建設再開 意見書に質問書 高崎のNPO 市長と議長に
倉渕ダムの建設再開を求める意見書を高崎市議会などが国に提出したことに対し、NPO法人アグレコ(同市金子町、竹渕進理事長)は23日、詳細な説明などを求める質問書と要望書を同市議会の根岸赳夫議長と富岡賢治市長宛に提出した。5月末までの回答を求めている。
意見書について同NPOは、「倉渕ダムの目的が利根川・江戸川の中下流域における治水対策に位置付けられているのに対し、高崎市内の洪水防止に役立つような印象を与える内容」と指摘。その上で、意見書にかかれた「氾濫危険水位」などの詳細な説明や、ダム建設で予想される烏川の水質悪化への対応を質問書にまとめた。要望書では、今後の国交省の調査結果について市議会で議論を深めるよう促すことを求めている。
同NPOは県内在住の27人で構成し、ダムの計画地に生息する絶滅危惧種のクマタカの観測や自然観察会に取り組んでいる。
写真=倉渕ダムの水没予定地。このページの写真は2026年4月24日撮影)

写真=倉渕ダムの水没予定地を流れる烏川。水源は長野県軽井沢町、群馬県高崎市、長野原の境に聳える鼻曲山。

写真=倉渕ダム予定地の下流側を流れる烏川。川の脇にある旧川浦小学校には”くらぶち英語村”が開設され、小中学生が自然の中で国内留学する施設として活用されている。夏には子供たちが川遊びを楽しむ。
