長崎県が推進してきた石木ダム事業をめぐり、2月の知事選挙で初当選した平田研県知事がどのような道筋で行政代執行を目前にした石木ダム問題の解決を目指すのかが注目されています。
以下の記事でも説明されているように、平田氏は知事選の際、流域委員会という公の場で石木ダム問題を議論すると約束し、これが当選の原動力となりました。一方で、ダムを推進する勢力も平田氏を支援してきた経緯があり、これまで新知事は賛成・反対両者の期待をつなぎ留めてきました。平田氏は国土交通省の出身であり、ダム事業に様々な欺瞞があることはよく知っている筈ですが、今のままでは平田氏に期待してきたダム反対世論を裏切ることになります。
◆2026年5月23日 西日本新聞
https://news.jp/i/1430669515193073859?c=684597186287141985
ー石木ダム有識者会議 市民団体「公開討論で検証を」 長崎県は知事が個別聴取… 手法巡り平行線ー
石木ダム建設事業を巡り、県が設置を進める有識者会議の在り方について、市民団体が平田研知事に要望を重ねている。団体は建設反対派の住民を支援する人々で、半世紀にわたって完成に至らないダムの必要性や技術的な課題を可視化するため、専門家同士が公開討論する手法を求めている。ただ、県は知事自身が専門家から個別に意見を聞き取る形を採るとし、主張は平行線をたどっている。 (一ノ宮史成、重川英介)
「一方的に意見を聞くだけでは知事も判断しにくいはず。有識者同士の意見交換もして、客観的に判断してほしい」。4月30日、県庁の一室。市民団体「市民による石木ダム再評価監視委員会」のメンバーがそう求めると、知事は「今日の話も踏まえ、会の持ち方を考えたい」と応じた。
市民団体と知事とでは、建設に賛成、反対それぞれの立場の有識者から意見を聞くことでは一致している。ただ、県からは聴取の方法や検証プロセスが示されておらず、市民団体は「ただ話を聞くだけの場になるのではないか」と直談判に至った。
面会を経た今月15日、県は「知事の強い意向」とする回答書を市民団体に出した。手法に変更はなく、専門家と知事のやりとりをインターネットで中継することを提案した。同19日、市民団体は手法の再考を促し、知事が最終判断を下すプロセスなどについて説明するよう文書で要請した。
ダム建設に反対し、水没予定地で暮らす70代の男性は「専門家が意見を戦わせれば、ダム計画のおかしさが見えてくる。県はそれを恐れているんだろうか」と県の姿勢を疑問視する。県河川課は「(市民団体の)要請にどう対応するか、検討したい」としている。
■「流域委」かすむ約束 住民不満
有識者会議の位置付けについて、県は3カ月程度で平田研知事が意見を聞き取り、ダム計画の根幹となる河川整備計画を策定したり、見直したりするための河川法上の「流域委員会」を開くか否かを判断する、としている。
「流域委」は2月の知事選で平田氏が初当選する原動力の一つとなった。市民団体などは大石賢吾前知事時代にも設置を要望したが、当時の県は「現時点で計画を見直す必要はない」として設けなかった。
一方、平田知事はダム推進を公言しつつも知事選告示直前、支援を受ける見返りに大倉聡県議らと流域委設置の政策協定を結んだ。大倉県議は協議の中で河川法に基づく流域委との認識で一致したとするが、知事は当選後、「(法定と)断言した訳ではない」と説明し、今となっては「法に基づくものではない」と明言する。
一連の流れを反対派住民らの視点でみると、こう映る。選挙時は計画見直しにもつながる流域委だったものが、当選後は法に基づかないものに。さらに、交渉を経て「意見を聞くだけの場」となる。
水没予定地で暮らす岩下すみ子さん(77)は、法定の組織として位置付けられていないことに対し「選挙で約束した以上、きちんとやってほしい。納得できない」と語る。