さる7月15日、国土交通省は川辺川ダム事業について事業認定を行ったことを公表しました。
「事業認定」の趣旨は、公共事業の「公共性」の可否を判断し、事業に反対する地権者から事業用地を強制収用する権限を事業者に与えるかどうかを決定することです。川辺川ダムの場合、事業者(国土交通省九州地方整備局)が申請した事業の認定を行うのは国土交通省本省ですから、認定されないことはありえません。それでも多くの流域住民がダム事業に反対し、公聴会で意見陳述を行いました。
【関連ページ】「川辺川ダム、強制収用めぐり公聴会、大半が反対意見」
奇しくも、事業認定を告知した金子恭之国交相は、長年川辺川ダム事業を推進してきた地元選出の国会議員です。残念ながら、八ッ場ダム同様、川辺川ダム事業もまた一歩、前に進むことになります。半世紀以上前から続くダム事業は、来年度に本体工事に着手し、2035年度の完成を目指すとのことです。日本一の清流が失われようとしています。
◆2026年7月15日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/2014046
ー金子国交相、熊本・川辺川の流水型ダム事業認定 強制収用可能にー
金子恭之国土交通相は15日、国が球磨川支流の川辺川に計画している流水型ダム建設事業を土地収用法に基づき認定した。任意協議による用地や漁業権の取得が困難になった場合、熊本県収用委員会の裁決を経て収用が可能になる。ただ、収用手続きは保留した。
金子国交相は熊本日日新聞の取材に対し、昨年9月に国交省が地元住民らを対象に開いた公聴会や、国の社会資本整備審議会での議論を踏まえ、「公益性などの観点から慎重に事業の認定要件を満たすかどうか確認してきた。公正性、中立性を確保して審査し認定を決めた」と話した。
収用手続きは最長3年間保留できる。手続きを開始した場合、1年以内に収用の裁決を申請しないと事業認定は失効する。国交省川辺川ダム砂防事務所の担当者は「任意協議による用地取得に努める一方、事業が遅れないよう手続き開始時期を見極める」と話した。現時点で対象用地1203件のうち99%は取得済みで、数件の土地が残っているという。
国交省は事業認定の告示でダム事業について、球磨川流域住民の生命、財産の保全に寄与することから「公共の利益は相当程度ある」と説明。国が2024年に公表した環境影響評価レポートの結果を基に、土砂による水の濁りは環境保全措置で「低減できると評価されている」とした。動植物や生態系への影響も小さいか、回避、低減できるとし、事業は「合理的であると認められる」と判断した。
流水型ダムは20年7月豪雨で氾濫した球磨川水系の治水対策として、県の要請を受けた国交省が相良村に計画。国交省九州地方整備局が25年5月に事業認定を申請していた。高さ107・5メートル、総貯水容量約1億3千万トンで、普段は水をためない穴あき型で、国内最大の治水専用ダムとなる。27年度の本体工事着工、35年度の完成を予定している。
旧川辺川ダム計画は00年に事業認定されたが、05年の収用裁決申請取り下げを受け、事業認定が失効。旧計画は25年3月末で廃止された。(川野千尋、中尾有希)
◆2026年7月15日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASV7H3GJNV7HTLVB001M.html
ー熊本・川辺川ダム建設、国交相が事業認定 用地の「強制収用」可能にー
国土交通省が熊本県で進める川辺川ダムの建設事業(相良村、五木村)について、金子恭之国交相は15日、土地収用法に基づく事業認定をしたと告示した。今後は所有者の同意が得られなくても、県収用委員会での裁決を経て用地の強制収用が可能になる。
国交省は2027年度にダム本体の基礎掘削工事に着手し、35年度の事業完了を目指す。担当する同省の川辺川ダム砂防事務所によると、本体工事に必要な土地は取得済みで、全体事業の中で未取得の土地があと数件あるという。同事務所は「認定後の収用手続きは当面保留し、引き続き任意による用地取得に努める」とする。
事業認定の理由としては、「流域の洪水被害を軽減させる公共の利益が相当程度ある」「環境などの失われる利益は軽微」「流域12市町村長で構成する協議会などから、早期完成に強い要望がある」などを挙げている。事業認定の申請後に国交省が住民らの意見をきいた公聴会では、費用対効果や環境保全、治水効果などを疑問視し、反対する意見が多かった。
ダム計画は1966年に旧建設省が発表し、反対の住民意見などを受けて2008年に当時の蒲島郁夫知事が「白紙撤回」を表明。民主党政権が翌年、建設の中止を表明したが、20年7月の豪雨を受けて流水型ダムの建設へと方針転換された。