八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

署名と要望書を国交大臣に提出

2010年12月11日

 八ッ場あしたの会では、2009年12月より他の市民団体と共に、「八ッ場ダム事業などの中止」と「現地住民の生活再建の早期実施」を求め、総理大臣、国土交通大臣へ提出する署名集めを行ってきました。
 昨日、津川国土交通政務官に面談し、これまでに集まった署名1万5、234筆を手渡しました。署名提出に際しては、八ッ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟会長の川内博史衆議院議員、事務局長の初鹿明博衆議院議員が同行しました。当日、事務局に届いた署名が更に337筆あり、追加提出することとなりましたので、署名総数は1万5,571筆となります。
 署名活動にご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。インターネット署名をして下さった方々から多くのメッセージをいただきました。メッセージの一部を下記に掲載しています。
 ↓
https://yamba-net.org/wp/modules/page/index.php?content_id=7 

 今回の署名提出の際、提出した要望書を以下に貼り付けます。

2010年12月10日
国土交通大臣   馬淵澄夫 様
    副大臣   三井辨雄 様
    大臣政務官  津川祥吾 様

          
             首都圏4ダム等事業中止と生活再建実施を求める署名提出

 八ッ場あしたの会(代表世話人 野田知佑ほか)
 八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会、八ッ場ダムをストップさせる群馬・茨城・埼玉・千葉・東京の会、ムダなダムをストップさせる栃木の会,霞ヶ浦導水事業を考える県民会議、利根川流域市民委員会

 私たち、首都圏のダム等事業の見直しを求めて活動している市民団体は連携して、1年前より、「八ッ場ダム・霞ヶ浦導水・湯西川ダム・南摩ダム各事業の中止と地元住民の生活再建の早期実施」を求める署名を集めて参りました。
 署名数が1万5234筆に達し、首都圏の多くの市民が「必要性のないダム等の事業を中止して、一刻も早く水没予定地の生活再建実施を」求めていることが明らかになりましたので、この署名を提出いたします。
この首都圏の市民の意思を踏まえて、今後の河川行政を次のように進められることを強く要望いたします。

1 客観的・科学的なダム検証の実施を!

 上記4事業のうち、湯西川ダムを除く3事業(八ッ場ダム・霞ヶ浦導水・南摩ダム)は国土交通大臣の指示によるダム検証作業が始まろうとしています。しかし、その検証の手順と基準を定めた「ダム事業の検証に係る検討に関する再評価実施要領細目」では客観的・科学的なダム検証が行われる保証がありません。改善すべきところが数多くありますが、最も重要な3点は次のとおりです。検証の進め方を下記のとおり、抜本的に改善した上で、検証を進めてください。

① 「ダム案と代替案との総合評価で残事業費を基本とするコストを最重視する」ことになっているが、これではダム案が生き残るので、今後増額も予想される不明瞭なダム残事業費ではなく、ダム事業がもたらす様々なマイナス面も含めて総合的な評価を行うこと

 「再評価実施要領細目」ではダム案と代替案との総合評価において、残事業費を基本とするコストを最も重視することになっていますが、これでは、ダム事業は建設が進むほどその残事業費が小さくなって、ダム案が有利となり、ダム案が自動的に選択されることになります。
今後増額も予想される不明瞭なダム残事業費ではなく、ダム事業がもたらす様々なマイナス面、災害誘発の危険性やかけがえのない自然の喪失など、様々な弊害を最重視して、代替案との総合評価を行うことが必要です。

② 利水の検証において利水参画者の過大予測を是認したままではその大きな水量を確保する有効な代替案が今更あるはずがなく、結局はダム案が有利になるので、水需要の過大予測を是正し、実績との乖離の幅を極力小さくした上でダムの是非を検証すること

 利水面の検証で最も重要なことは、水需要の実績とかけ離れた各利水参画者の過大な水需要予測を是正することですが、「再評価実施要領細目」では利水参画者から出た開発必要量について形式的な確認作業を行うだけであり、これでは、過大予測が是正されることがほとんどありません。
過大予測を是認したままではその大きな水量を確保する有効な代替案が今更あるはずがなく、結局はダム案が有利という結果になることは目に見えています。
 利水の検証においては、例えば、最新の実績値と予測値との乖離を実績値の5%以内にとどめるなど、一定のルールを設けて水需要の実績と乖離した過大予測を是正し、乖離の幅を極力小さくした上でダムの是非を検証することが必要です。

③ ダムができた場合に憂慮される地すべり等の災害誘発の危険性も検証の重要なテーマとして、科学的な検証を行うこと

 とりわけ、八ッ場ダムについては、貯水池予定地周辺は地質が脆弱なところが多いため、ダム湖ができ、貯水位が大きく上下すると、地すべりが各所で誘発されることが憂慮されています。国土交通省の調査でも貯水池予定地周辺で地すべりの可能性があるところが22箇所にも及んでいます。その周辺には住民の居住地(代替地および以前からの集落)があるところも少なくなりありません。その中で、国土交通省が対策工事を行うのは2箇所だけで、その他のところは調査を実施して問題があればということになっています。その2箇所も簡易な押え盛り土工が行われるだけです。
 ところが、「再評価実施要領細目」ではこのような災害誘発の危険性は評価項目に入っていません。八ッ場ダム等については災害誘発の危険性は看過できない重要テーマですので、その危険性について科学的検証を入念に行ってダム建設の是非を判断することが必要です。

2 ダム中止後の生活再建支援法の早急な制定を!

 昨年9月に国土交通大臣がダム中止補償法案(いわゆる「ダム中止後の生活再建支援法案」)を今年の通常国会を提出することを言明しましたが、12月になって先送りすると発表し、今年6月には来年の通常国会に提出するとしました。ところが、今年9月には国土交通大臣は来年の通常国会への提出をさらに先送りすることを示唆しました。
しかし、ダム計画に長年翻弄され、経済的にも精神的に多くのダメージを受けてきたダム予定地の住民に対してダム中止後、生活再建のための十分な支援を行うことは国の責務です。
この生活再建支援を確実に実施できるように、ダム中止後の生活再建支援法を早急に制定してください。

                                                    以上