八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

滋賀県の北川ダム凍結のニュース

 民主党政権による国のダム検証は、官僚に丸投げされた格好ですが、滋賀県では嘉田由紀子知事の下、河川行政の見直しが具体化しています。
 滋賀県においては、ダム事業の科学的な検証により、よりよい治水の在り方を追及し、これまでダム事業の犠牲になってきた地元の人々を尊重しつつダム計画の見直しが進められています。地元と流域双方の住民の理解を得ている滋賀県の手法は、現在の八ッ場ダム事業をめぐる国交省と関係都県を主役とした茶番劇とは対極にあるものです。
 関西では、嘉田知事をはじめとする淀川流域の府県知事や改革派官僚や良心的な科学者の活躍で、河川行政の見直しが紆余曲折を経ながらも進められてきました。このような変化の兆しが全く見られない関東地方は、残念ながら河川行政においては最も遅れた地域となっていますが、利根川流域住民の多くがこのことを知りません。

◆2011年9月6日 京都新聞 
http://kyoto-np.jp/politics/article/20110906000012

 -北川ダム建設を凍結 滋賀県方針案11日表明へ―

 滋賀県高島市朽木の安曇川支流で計画されている滋賀県営北川ダム事業で、県はダム建設を凍結し、土砂の除去など河道改修で治水を行う方針案を5日までに固めた。

 11日に同市で開く検証会議で、嘉田由紀子知事が表明する。国が示したダム事業の見直し基準に加え、県独自の浸水想定の結果を踏まえて判断した。

 嘉田知事が掲げるダムだけに頼らない治水方針を反映した形で、構想から38年を経て、北川ダム事業は大きな節目を迎えた。

 県は国の見直し基準に基づき安全度やコストなどを評価。さらに、安曇川流域の浸水被害を想定する際、近隣の鴨川や農業排水路の氾濫も考慮して人家の浸水戸数などを独自に算出し、総合判断として「河道改修単独」を治水案に決めた。

 県は流域住民や高島市を交えた検証会議で治水案を説明し、県民や学識者の意見を聞いて年内をめどに正式決定する。県から報告を受けた国が事業の是非を最終判断する。

 県は、安曇川での30年に一度の洪水に備える当面の治水目標として(1)第一、第二北川ダムの建設と河道改修を合わせた現計画(2)第一ダムと河道改修の組み合わせ(3)河道改修単独―の3案を提示していた。

 北川ダムは国が1989年に事業採択し、第一ダムは99年に工事用道路事業に着工したが、2007年に建設予定地で希少種のクマタカの生息を確認したため、事業を休止している。本体工事は第一、第二ダムとも未着工。

(地図)北川ダムの略図

◆2011年9月6日 読売新聞関西版 
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20110906-OYO1T00741.htm?from=main3

 -北川ダム建設凍結 嘉田滋賀県知事表明―

 滋賀県は高島市朽木の安曇川支流で計画している県営「北川ダム」の建設を凍結する方針を固めた。同市で11日に開かれる流域住民や市関係者との会議で、嘉田由紀子知事が表明する。

 北川ダムは第1、第2の2ダムで総事業費430億円。1986年に国から事業採択され、99年に第1ダムの工事用道路の造成に着工した。ダム本体は未着工。

 2009年12月に国が全国のダム計画について、建設の是非を再検証する対象となった。県は、30年に一度の洪水に備え、安曇川流域での被害規模を独自計算するなどし、河川改修で対応できると判断した。

 嘉田知事は「ダムに頼らない治水」を掲げ、県内のダム事業について見直しを進めている。08年11月には、国の大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)の建設について、大阪、京都、三重の3府県知事と共同で白紙撤回を求め、現在、計画は凍結されている。

◆2011年9月7日 読売新聞滋賀県版 
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shiga/news/20110906-OYT8T01218.htm

 -北川ダム建設凍結方針 知事、予定地住民に陳謝ー

11日に正式表明

 高島市朽木の安曇川支流に計画されている県営「北川ダム」の建設凍結について、嘉田知事は6日の定例記者会見で「あくまでも、住民の皆さんの意見を聴いて決めたい」と明言は避ける一方で、「ダムに頼らない治水」の重要性を改めて強調した。

 午後には、建設予定地周辺の2集落を訪問し、住民と意見交換した。嘉田知事は11日、県と市、地元住民が事業のあり方を協議する「北川ダム建設事業『検討の場』会議」の席上で、正式表明する。

 嘉田知事は記者会見で、台風12号に伴う各地の集中豪雨など異常気象への対応を問われ、「流域全体を水害に強くするため、河川改修や堤防がある」と言及。「ダムも選択肢の一つだが、上流の雨にしか対応できない。時間とコストを考えた時、どうするかだ」と強調した。

 嘉田知事は同日午後、北川第1ダム(高島市朽木麻生)の予定地上流の木地山地区の寺で、ダム事業に伴って立ち退きに応じた1人を含む住民約15人と非公開で会い、集まった住民たちに「ダム事業が長い間進まず、申し訳ない」などと陳謝した。

 嘉田知事は会合後、立ち退きに応じた住民について、「古里を捨てさせられた思いは、一生消えないと思う。為政者として、思いを受け止めなければいけない」と語った。

 30年以上、計画に関わってきた「北川第一ダム木地山区対策委員会」の水谷良雄委員長(85)は取材に対し、事業凍結の方針に理解を示したうえで、地区への道路拡幅や県有地の森林の有効活用、過疎化を食い止める施策などを要望した。

 立ち退きに応じた平楽孫之亟(まごのじょう)さん(83)は「先祖代々の土地を手放しただけに、ダムを完成させてほしかったが、こればかりはしょうがない」と話した。

(写真)県が建設凍結の方針を固めた北川第1ダム予定地(2010年5月、高島市で)=本社機から

◆2011年9月7日 京都新聞
http://kyoto-np.jp/politics/article/20110906000118

 ー北川ダム凍結方針案 県知事、地元に陳謝 地域振興策を検討ー

 高島市朽木の安曇川支流で滋賀県が計画していた県営北川ダム建設事業の凍結方針案を固めた嘉田由紀子知事は6日、建設予定地の2地区を訪れ、構想開始から38年間にわたって地元に負担をかけていることを陳謝した。

 嘉田知事は北川第一ダム建設予定地の上流にあたる木地山地区と、下流の麻生地区を訪れた。知事が北川ダム建設事業の手続きが長期化したことを地元で陳謝したのは初めて。

 会合はいずれも非公開だった。木地山地区の会合には住民15人が出席した。嘉田知事は1973年の予備調査開始以来の経過を説明した上で「県や国に協力して移転した家もあり、いろいろとご心配をかけた。長年にわたりダム計画が動かなかったことをおわびしたい」と述べた。

 住民側は県道の改良や若者が定住できる環境整備を要望した。これを受け、嘉田知事は県道改良事業を進める意向を表明するとともに、高島市と連携して地域振興策を検討する考えを示した。

 北川ダムは国が1989年に事業採択したが、本体工事は第一、第二ダムとも未着工となっている。国が2009年に北川ダムを再検証対象ダムとしたため、県は今年2月から地元住民と協議を進めてきた。11日の第3回検証会議で嘉田知事が凍結方針案を正式に提案する。

◆2011年9月7日 中日新聞滋賀版 
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20110907/CK2011090702000113.html?ref=rank

 -知事、地権者らに公式謝罪 県営北川ダム建設予定地で―

 嘉田由紀子知事は6日、本体工事がストップしている県営北川ダムの建設予定地である高島市朽木麻生に入り、地権者らに1973(昭和48)年に県が予備調査を始めて以来、いまだに着手されていない現状に初めて公式に謝罪した。

 地権者と意見交換した後、嘉田知事は「ダム計画が動かなかったことをおわびしたかった。政治をつかさどる者として一人一人の思いを受け止め、やっていきたい」と語った。11日に地元で開く検討会で治水対策の方針を決める意向。

 意見交換はダム予定地の住民の暮らしぶりを見て、現状に謝罪をしたいとの知事の考えで実現。予定地の上流の木地山周辺地区と下流の麻生地区で2回にわたって開いた。

 木地山周辺の会合には、地権者ら約15人が出席した。

 会合後、木地山区対策委員長の水谷良雄さん(85)は「ダムはできたらいいが、県の財政や国の方針もあり仕方がない」と納得した。ただ「ダムはやめます、はいそうですかでは困る」と地域の活性化策や道路整備などを要望。嘉田知事からは「県として責任をもつ」との言葉があったという。

 2000年3月にダム予定地から移転した同市朽木野尻の平楽孫之烝さん(83)は「思いとしては、完成してほしい」と訴えるものの、嘉田知事の「誠意は通じた」と話した。平楽さんのほかに、もう1世帯が予定地から既に移転している。

 意見交換に先立ち嘉田知事はこの日の定例会見で「皆さんの意見を聞きながら、決めさせてもらいたい」と地元と歩調を合わせる姿勢を強調した。

 県は▽高島市朽木麻生の第1ダム、同市朽木雲洞谷の第2ダムの建設▽第1ダムのみの建設▽河道改修のみでの治水-の3案を提示している。

 北川ダム事業は、工事用道路は着工済みだが、2007年に建設予定地周辺でクマタカの生息を確認し事業を休止。国は昨年9月、地元の意見を聞いて再検証するよう求めている。 (木原育子)

(写真)会合の後も、地元の人たちの話に耳を傾ける嘉田知事(右端の後ろ姿)=高島市朽木麻生の長泉寺で

◆2011年9月7日 朝日新聞滋賀版
http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000001109070002

 -県、北川ダム建設締結の方針ー

【予備調査から38年「結論」/知事、住民に対応謝罪】

 北川ダムは、県が1953年の台風に伴う豪雨で安曇川が氾濫(はん・らん)して13人が死亡した水害を受けて計画。73年に予備調査を開始し、支流の麻生川と北川にそれぞれ第1、第2ダムを建設する予定だったが、2007年に絶滅危惧種のクマタカが発見されたため本体工事に入らないまま中断。さらに昨年、国が出したダム事業再評価の方針を受け、建設の是非を検討していた。

 県は安全度や、完成と維持に必要なコスト、実現性など7項目の国の再評価基準に加え、水害の発生確率を地域ごとに示した県独自の「地先の安全度」を加味して検討した。

その結果、河川改修を前提に、(1)第1、2の両ダムを建設(約487億円)(2)第1ダムのみ建設(約243億円)(3)ダム建設をしない(約65億円)の3案を地元住民に提示。いずれも同等の安全度があるとし、コストの低さから、ダム建設を凍結する方針を固めた。

 これを受け、嘉田由紀子知事は6日、建設予定地の地元住民と非公開で意見交換。終了後に取材に応じ、「水没するということで移転した家もあるのに、今までダム計画が動かなかったことをおわびした」と述べたうえで、「県が決めるならどちらになってもいいと言ってもらえた」と明かした。建設凍結については11日に高島市で開かれる会議で正式に表明するという。

 この日の会合に参加した北川第1ダム木地山区対策委員会の水谷良雄委員長(85)は「ダムがいいという考えに変わりはないが、県財政が苦しいのも分かる。計画が凍結されても生活道路の整備はちゃんとしてほしい」と訴えた。

 下流域にある安曇川沿岸土地改良区の川島平理事長(69)は「安曇川の水量が減っており、渇水時にダムがあった方が助かるが、今後、保水力が回復するのとダムを建設するのどちらが現実的か、判断が難しい」と話した。

(写真)意見交換会の終了後、取材に応じる嘉田由紀子知事=高島市朽木麻生