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利根川の河川整備計画策定に関する質問主意書

2012年2月15日

 八ッ場ダム本体予算執行の条件である利根川水系の河川整備計画策定についての質問主意書と政府答弁書が公開されました。質問項目ごとに整理したものを以下に転載します。政府答弁は河川官僚による作文です。

 利根川水系河川整備計画の策定に関する質問主意書と政府答弁書

 提出者 中島政希衆議院議員   2012年2月2日
 政府答弁書           2012年2月10日

一 利根川水系河川整備計画の策定作業の経過について

1 策定作業の経過について
【質問】
 平成十八年十一月から二十年五月まで利根川水系河川整備計画の策定に係る有識者会議や公聴会の開催、パブリックコメントなどが行われた。①有識者会議が当時、どのような経過で進められたか、②公聴会の開催が当時、どのような経過で進められたか、③パブリックコメントが当時、どのような経過で進められたか、①~③のそれぞれの経過を詳しく説明されたい。

【答弁】
 利根川水系の直轄管理区間における河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第十六条の二第一項に規定する河川整備計画(以下「利根川河川整備計画」という。)の策定に当たっては、同条第三項に規定する学識経験を有する者の意見等を聴く場として利根川・江戸川有識者会議、渡良瀬川有識者会議、鬼怒川・小貝川有識者会議、霞ヶ浦有識者会議及び中川・綾瀬川有識者会議の五つの有識者会議を設置しており、それぞれの会議の開催日は次のとおりである。
 利根川・江戸川有識者会議及び中川・綾瀬川有識者会議 平成十八年十二月四目、同月十八日、平成十九年二月二十二日及び平成二十年五月二十三日
 渡良瀬川有識者会議 平成十八年十一月二十九日、同年十二月二十日、平成十九年二月二十二目及び平成二十年五月二十三日
 鬼怒川・小貝川有識者会議 平成十八年十二月四目、同月二十日、平成十九年二月二十二目及び平成二十年五月二十三日
霞ヶ浦有識者会議 平成十八年十一月二十九日、同年十二月十八日、平成十九年二月二十二目及び平成二十年五月二十三日
 また、利根川河川整備計画の策定に係る公聴会については、平成十九年二月二十二目、同月二十三日、同月二十六日から二十八日まで、同年三月一日、同月二日及び同月五目から九日までに開催し、利根川河川整備計画の策定に係るインターネット及びはがき等による意見募集については、同年一月十目から二月九日までを募集期間として実施した。

2 関東地方整備局の言明について
【質問】
 平成十八年十二月十八日の第二回利根川・江戸川有識者会議の議事録を見ると、関東地方整備局が次のように述べている。「公聴会を開かせていただきまして、その中でもいろいろな川づくりに対する思いですとか、そういった部分を意見を伺わせていただければと思っております。(中略)それから、河川整備計画の原案をそういった意見を踏まえてつくらせていただこうと思っておりまして、また、その河川整備計画の原案につきましては、全体の意見を取りまとめて整理させていただいた上で、その後の有識者会議になろうかと思いますが、そこの段階でお示しさせていただければと思っております。その段階におきまして、また関係住民の方々にもインターネット等での意見募集、それから公聴会、そういったものを開かせていただいて、再度意見をいただいて、また、その整備計画の原案を修正させていただく。で、また修正したものにつきましても、再度ご提示させていただいて、また学識の先生方、それから関係住民の方々からご意見をいただくと、そういったことを何回か実施させていただきまして河川整備の案を取りまとめていきたいと思っております。」 このように、関東地方整備局は公聴会やパブリックコメントを繰り返し実施してそれらの意見を整備計画案に反映させることを約束している。この議事録に誤りはないか。

【答弁】
 御指摘の議事録の記述については、「(中略)」の記述の部分を除き、国土交通省関東地方整備局が作成した第二回利根川・江戸川有識者会議の議事録の記述と相違はない。
 
3及び4 策定作業中断の理由と責任について

【質問】
3 策定作業中断の理由について
 平成二十年五月二十三日第四回有識者会議合同会議の議事録では、会議の最後に関東地方整備局が次のように述べている。「いずれにいたしましても、きょうの御議論を踏まえまして、次回にはまた御議論いただくもとになります整備計画のたたき台をお示しをいたしまして、また、それを説明します。基礎的な状況というのもできる限りわかりやすくお示しをして、また皆様の御意見を賜ればというふうに考えております。」 ところが、利根川水系河川整備計画の策定作業はそこで中断され、関東地方整備局から何の発信がないまま四年近く経っている。整備計画の策定作業を中断した理由を具体的に明らかにされたい。

4 策定作業中断の責任について
 上述のとおり、関東地方整備局は平成二十年五月二十三日の有識者会議で、整備計画のたたき台を次回示すことを言明したにもかかわらず、その後の動きは途絶えた状態になっている。河川法が平成九年に改正されてから十数年経ち、河川整備計画の策定が喫緊の課題になっているにもかかわらず、理由を明らかにすることなく、策定作業を長年中断したまま放置しているのは問題であり、関東地方整備局の責任は重大である。このことについて政府の見解を示されたい。

【答弁】一の3と4
 利根川河川整備計画の策定に当たっては、平成二十年度まで一の1についてでお答えした有識者会議等を実施したところであり、利根川水系においては、平成二十一年度に、全国のダム事業の検証を行うこととしたことを踏まえて、八ッ場ダム建設事業の検証を予断を持たずに行い、平成二十三年十二月に八ッ場ダム建設事業に関する対応方針を決定したところである。

二 河川法改正の本旨について

1 河川法改正時の国会答弁について
【質問】
 平成九年五月九日の衆議院建設委員会で、建設省の当時の尾田栄章河川局長は大野由利子議員の質問に対して次のとおり、答弁している。 ○大野委員「関係住民というのは、地域に住む住民だけではなくて、関心を持つ住民、このように解釈をさせていただいていい、そういうことではないか、このように思っておりますが、意見の言いっ放し、聞きっ放しで終わったのでは何にもならない。これがどのように担保されるのかについて伺いたいと思います。」 ○尾田政府委員「先生御指摘のとおり、言いっ放し、聞きっ放しというのでは全く意味がないというふうに考えておりまして、具体の河川整備計画の案を策定する段階で、十二分に案を策定するために、案の案、原案の案、そういう意味では原案でございますが、これを御提示をいたしまして、それについて御意見をいただく、その上で必要なものについては修正をするという形で考えておりますので、まさにその河川整備計画に関係住民の皆さん方の意向が反映をしていくというふうに考えております。」 この議事録で明らかなように、河川管理者が関係住民の意見を反映させて整備計画案を修正することは河川管理者の責務である。このことについて政府の見解を示されたい。

【答弁】
 河川法第十六条の二第四項は、河川管理者は、河川整備計画の案を作成しようとする場合において必要があると認めるときは、公聴会の開催等関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない旨を規定しており、河川管理者は、関係住民の意見を十分検討し、必要と判断した場合には同計画の案に反映させることとなる。

2 関係住民の意見を整備計画の策定に反映する仕組みについて
【質問】
 公聴会やパブリックコメントで出された関係住民の合理的な意見を河川整備計画に反映させるために、具体的な仕組みを作る必要がある。すなわち、関係住民と河川管理者が公開の場で十分な議論をして、何が合理的であるかが明らかになるように、公開の円卓討論会のようなものを設置して繰り返し開催し、議論をつくすことが必要であると考えるが、このことに関して政府の見解を示されたい。

【答弁】
 河川法第十六条の二第四項に規定する公聴会の開催等関係住民の意見を反映させるために必要な措置の具体的な方法については、地域の実情等を踏まえ、河川管理者が適切に判断するものであると認識している。

三 平成十八年十一月からの策定作業で示された利根川水系河川整備計画の枠組みと、八ッ場ダム事業検証の前提となった枠組みについて

三の1及び2
【質問】
1 平成十八年十一月からの利根川水系河川整備計画の策定作業で関東地方整備局から配布された資料には、整備計画の治水のメニューを見ると、本川の目標治水安全度は五〇分の一、八斗島の河道目標流量は毎秒一三〇〇〇?、八斗島地点より上流の洪水調節施設として、①既設ダム、②八ッ場ダム、③ダムの容量再編事業、④烏川調節池が記されている。この記述に誤りはないか。

2 ダムの容量再編事業としては、下久保ダムの利水容量を奥利根のダム群に振り替えて治水容量を増やす事業と、奥利根の藤原ダムの利水容量を奈良俣ダムに振り替えて治水容量を増やす事業が記されている。この記述に誤りはないか。

【答弁】三の1及び2
 ご指摘の「関東地方整備局から配布された資料」が何を指すのか必ずしも明らかでないが、第一回利根川・江戸川有識者会議の資料一の十ページに「利根川水系における河川整備計画の主要メーニュー(治水)として掲載している図において、目標治水安全度として「本川五十分の一」、八斗島地点における河道目標流量として毎秒「一三〇〇立方メートル」、八斗島地点上流の洪水調節施設として「八ッ場ダムの整備」、「ダムの容量再編」及び「烏川調節池の整備」が記載されており、また、既設のダムとして「矢木沢ダム」等が記載されている。さらに、同会議の資料―二の十三ページにおいて、ダムの容量再編について「下久保ダムの利水容量を治水容量に振り替え、振り替え先は利水上有利な奥利根流域で検討」及び、「奈良俣ダムと藤原ダムの容量再編を実施』と記載されている。

三の3
【質問】
 ところが、今回の八ッ場ダム事業の検証の前提とされた利根川水系河川整備計画の枠組みは平成十八年~二〇年当時のものとは大きく変わっている。本川の目標治水安全度そのものが七〇分の一~八〇分の一に引き上げられている。平成十八年~二〇年当時において目標治水安全度を五〇分の一とした理由を具体的に明らかにされたい。

【答弁】
 第四回利根川・江戸川有識者会議の資料―三の一ぺージにおいて、目標設定の考え方として、「現在の利根川水系の治水・安全度の状況(利根川上流部では概ね三十分の一から四十分の一,利根川下流部では概ね十分の一から二十分の一)を考慮し、利根川本川・江戸川は、概ね五十年に一回の確率で生起すると予想される洪水を安全に流下させるように河道の整備と洪水調節施設の整備をバランスよく行うことを考えています。」と記載されている。

三の4
【質問】
 今回の八ッ場ダムの検証では治水安全度が七〇分の一~八〇分の一、八斗島地点の洪水調節を含めた治水目標流量が毎秒一七〇〇〇?となっている。一方、平成十八年~二〇年当時は目標治水安全度が五〇分の一であるが、治水目標流量が示されていない。治水安全度が五〇分の一である場合の治水目標流量は上記の数字の関係から見て、毎秒一五〇〇〇?程度であると推測されるが、国土交通省の計算による数字を示されたい。

【答弁】
 平成十八年から平成二十年までの問、国士交通省関東地方整備局においては、利根川河川整備計画の策定に係る様々な検討を行っており、例えば、個別施設の配置に関する検討を行う際に、対象洪水の選定の目安として毎秒「一五〇〇〇」立方メートルを用いたことはあるが、目標流量の案として流量を提示するには至っていない。

三の5及び6
【質問】
5 平成十八年~二〇年当時の計画メニューでは、河道目標流量は八斗島地点で毎秒一三〇〇〇?であったが、今回の八ッ場ダムの検証では毎秒一四〇〇〇?となり、一〇〇〇?大きくなっている。今後二〇~三〇年間に行う河川整備で達成できる河道流下能力が急に大きくなるのは何故か。その理由を明らかにされたい。

6 今回の八ッ場ダムの検証では八斗島上流の洪水調節量は差し引き毎秒三〇〇〇?であるが、一方、平成十八年~二〇年当時の計画メニューでは、治水安全度五〇分の一の治水目標流量を毎秒約一五〇〇〇?とすれば、洪水調節量は毎秒約二〇〇〇?となる。洪水調節量が約一〇〇〇?も増えた理由を明らかにされたい。

【答弁】三の5及び6
 八ッ場ダム建設事業の検証においては、利根川水系以外の直轄河川の河川整備計画では、急流河川等の例外的なものを除けば、河川整備計画の目標流量の規模は年超過確率二十分の一から七十分の一までの範囲となっていること等を踏まえた上で、利根川水系の社会・経済的重要性等を考慮し、八斗島地点における河川整備計画相当の目標流量を年趨過確率七十分の一から八十分の一に相当する毎秒一万七千立方メートルとした。また、「八ッ場ダムを含む治水対策案」の立案に当たっては、適正な上下流・本支川バランスの確保の観点等から、上流の洪水調節施設により調節される流量を毎秒三千立方メートル程度とし、八斗島地点から江戸川分派点までの区間における河道目標流量を詮毎秒一万四千立方メートル程度とすることとしたものである。なお、目標流量等の検討に当たっては、河川の現況及び河道掘削等の現在実施中の主なプロジェクト等の状況により、実現可能性等を考慮している。

三の7
【質問】
7 今回の八ッ場ダムの検証で前提となっている八斗島上流の洪水調節施設は①既設ダム、②八ッ場ダム、③ダム容量の再編事業、④烏川調節池であるが、その内容を平成十八年~二〇年当時の計画メニューと見比べてみると、下久保ダムの容量再編事業がなくなり、そのほかはほとんど同じである。この認識に誤りはないか。誤りがあれば、正しい情報を示されたい。

【答弁】
 御指摘の「八ッ場ダムの検証で前提となっている八斗島上流の洪水調節施設」及び「そのほかはぼとんど同じである」の意味するところが必ずしも明らかでばないが、第一回利根川・江戸川有識者会議の資料―一及び資料-二における八斗島地点上流の洪水調節施設に関する記述については三の1及び2についてでお答えしたとおりであり、平成二十三年十一月に国土交通省関東地方整備局が公表した「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書」(以下「検討報告書」という。)の四―五十ページの「八ッ場ダムを含む治水対策案の主な事業内容」において八斗島地点上流の洪水調節施設として「八ッ場ダム建設」、「利根川上流ダム群再編」及び「烏川堤外調節池(新設)」が記載されており、お尋ねの「下久保ダムの容量再編事業」については記載されていない。

三の8及び9
【質問】
8 以上のことを踏まえれば、八斗島に近くて治水効果が比較的大きいと考えられる下久保ダムの容量再編事業が今回の八ッ場ダムの検証の前提ではなくなったにもかかわらず、八斗島上流の洪水調節量が逆に毎秒約二〇〇〇?から三〇〇〇?に増加しているのは何故か。その理由を具体的に説明されたい。

9 平成十八年~二〇年当時の計画メニューによる八斗島上流の洪水調節量毎秒約二〇〇〇?の内訳、すなわち、①既設ダム、②八ッ場ダム、③ダム容量の再編事業、④烏川調節池のそれぞれの洪水調節量を明らかにされたい。

【答弁】三の8及び9
 三の4についてでお答えしたとおり、平成十八年から平成二十年までの間、国土交通省関東地方整備局においては、目標流量の案として流量を提示するには至っておらず、お答えすることは困難である。

三の10
【質問】
10 同様に、八ッ場ダムの検証で前提とした河川整備計画の枠組みによる八斗島上流の洪水調節量毎秒三〇〇〇?の内訳、すなわち、①既設ダム、②八ッ場ダム、③ダム容量の再編事業、④烏川調節池のそれぞれの洪水調節量を明らかにされたい。

【答弁】
 八ッ場ダム建設事業の検証において、河川整備計画相当の目標流量である毎秒一万七千立方メートルに対する八斗島地点上流の洪水調節施設により調節される流量として設定した毎秒三千立方メートルについての内訳は存在しないが、検討報告書によれば、八斗島地点上流の洪水調節施設により調節される流量が毎秒二千八百四十立方メートルとなる昭和三十四年八月十二日から発生した洪水の降雨波形による流出計算により算出した「既設ダム」、「八ッ場ダム」、「ダム再編」及び「烏川調節池」の洪水調節効果量はそれぞれ毎秒約千二百九十立方メートル、毎秒約千四百六十立方メートル、毎秒約九十立方メートル及び毎秒零立方メートルである。

三の11
【質問】
11 以上のとおり、平成十八年~二〇年当時の利根川水系河川整備計画の枠組みの数字と比べると、八ッ場ダムの検証の前提となったものは大きく変わっている。本来、科学的に求められた数字ならば、変更されるはずがない。それにもかかわらず、数字が大きく変更されるのは何故か。このことについて政府の見解を示されたい。

【答弁】
 お尋ねの「数字」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかでないが、八ッ場ダム建設事業の検証においては、利根川水系以外の直轄河川の河川整備計画では、急流河川等の例外的なものを除けば、河川整備計画の目標流量の規模は年超過確率二十分の一から七十分の一までの範囲となっていること等を踏まえた上で、利根川水系の社会・経済的重要性等を考慮し、八斗島地点における河川整備計画相当の目標流量を年超過確率七十分の一から八十分の一に相当する毎秒一万七千立方メートルとすることとしたものである。

四 今後の利根川水系河川整備計画の策定作業のスケジュールについて
【質問】
1 これから進められる利根川水系河川整備計画の策定作業はどのようなスケジュールで進められるのか、具体的なスケジュールを明らかにされたい。

【答弁】
 利根川河川整備計画の策定に係るスケジュールについては、現時点で未定である。