国土交通省が「流域治水」関連法案を今国会に提出します。
「流域治水」は、流域全体で洪水に対応する治水対策です。これまでは滋賀県が嘉田由紀子知事の時代に条例をつくるなど、積極的に取り組んだ先行事例があるだけです。巨大ダム建設に偏重した治水対策は、近年の豪雨の多発や国内にダム建設適地が残されていないことなどから行き詰っており、流域治水の導入は必要なことですが、どこまで実効性のある法律になるのか、まだわかりません。
◆2021年1月19日 読売新聞
https://qr.paps.jp/rzDzy
ー独自】浸水想定区域を「レッドゾーン」指定、開発を規制へー
国土交通省は、河川沿いの浸水被害が想定される区域を「レッドゾーン」に指定し、住宅や高齢者施設などの開発規制に乗り出す。新規開発の抑止や防災機能の強化を図り、多発する河川氾濫による被害を軽減するのが狙い。関連法の改正案を今国会に提出する。
国交省の案では、都市部の河川沿いで浸水対策を促進する「特定都市河川浸水被害対策法」に、「浸水被害防止区域」(レッドゾーン)を新設する。
数十年に1度の降雨などで浸水が予想される地域を、都道府県知事が同区域に指定。区域内に新設する住宅や高齢者施設などに対し、浸水に耐えられる構造を持つことや浸水想定より高い位置に居住空間を設定するなどの要件を課し、満たさない場合は建設を許可しない。既存の建物は対象外とする。
同被害対策法の適用地域は現在、東京や大阪などの8水系64河川だが、今後、適用地域を拡大し、全国の都市部でレッドゾーンを指定可能とする。
土砂災害や地滑り、津波については、住宅開発などを規制するレッドゾーンがすでに導入されているが、浸水は土砂災害などに比べて避難する時間があることなどから、レッドゾーンは設けられていなかった。一昨年10月の台風19号などで河川氾濫が相次いだことから、国交省が導入を検討していた。
◆2021年1月20日 日刊建設工業新聞
https://www.decn.co.jp/?p=118222
ー国交省/流域治水関連法案、実行生向上へ制度拡充/2月上旬の国会提出めざすー
国土交通省が開会中の通常国会に提出する流域治水関連法案の概要が明らかになった。あらゆる関係者が協働する流域治水の推進に向け計画や体制を強化する。氾濫を防ぐため、利水ダムを活用した事前放流や雨水貯留浸透対策、浸水対策も充実する。防災集団移転促進事業の要件を拡充し、危険エリアからの移転を促す。早期復旧に向け、権限代行制度の対象河川とメニューを拡充する。
流域治水関連法案は、特定都市河川浸水被害対策法改正案など9本の法律を束ねた。閣議決定を経て、2月上旬の提出を目指す。
計画・体制の強化では、総合的な浸水対策を推進するために特定都市河川の管理者らが策定する「流域水害対策計画」の対象を、地形など自然的条件を加味した上で全国の河川に拡大する。雨水貯留浸透対策などを話し合う法定協議会を設置する。
利水ダムの事前放流の実効性を高めるため、河川管理者や利水者で構成する法定協議会を設ける。事前放流したものの、予想より降水量が少なかった場合の損失補償制度も拡充する。
街づくりと連携した水災害対策にも取り組む。浸水被害の危険が高い「浸水被害防止区域」を都道府県知事が指定する制度を創設し、区域内の開発・建築を許可制にする。防災集団移転促進事業のエリア要件を拡充。現行は災害が発生した地域や災害危険区域だけだが、浸水被害防止区域や土砂災害特別警戒区域などを加える。災害時の避難先となる拠点整備や地区単位での浸水対策を推進し、市街地の安全性を高める。
被害軽減に向け、洪水などに対応したハザードマップの作成対象を大河川だけでなく中小河川にも広げ、リスク情報の空白地域の解消を目指す。
被災自体の迅速な復旧・復興を後押しするため、国交相による権限代行制度も充実する。対象を現行の都道府県管理河川(1級河川指定区間、2級河川)から市町村が管理する準用河川に拡大。支援メニューは改良工事や修繕、復旧工事が対象だったが、洪水や土砂崩れなどで河川に堆積した土砂や流木の排除も追加する。
◆2021年1月22日 日刊工業新聞
https://newswitch.jp/p/25608
ー浸水リスクが高い地域に集団移転促す。費用は94%を公的負担、国交省が改正案ー
国土交通省は大雨による河川氾濫のリスクが高い地域の住宅が、5戸以上まとまって安全な場所に集団移転できる制度を設ける。現在の防災集団移転促進事業の対象は、東日本大震災などすでに水害が発生した地域か、建築基準法で土砂崩れや津波などの危険があると判断された災害危険区域だけ。気候変動に伴う大雨で河川氾濫が相次いでおり、浸水リスクが高い地域を「浸水被害防止区域」に指定し対象を広げる。
国交省は今国会に、特定都市河川浸水被害対策法など流域治水に関連する法律の改正案を提出する。集団移転にかかる用地取得や造成、建築などの費用は、国が4分の3の補助と地方財政措置を合わせ少なくとも94%を負担することで、事前移転を促す。
また、浸水被害防止区域では住宅などの建築は、かさ上げやピロティ構造で居室を一定の高さにしないと許可しない。
区域指定は流域治水協議会の意見を基に都道府県知事が出す。ハザードマップを参考にするが、地域の実情に合わせた判断を可能にする。例えば東京・江東5区の集団移転は非現実的で、中高層建築物を空中デッキで結んだ少しでも安全な街づくりを検討している。
◆2021年1月24日 日本経済新聞(共同通信)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG21E1Y0R20C21A1000000
ー浸水区域は建築許可制 住宅、高齢者施設被害防ぐー
国土交通省は24日までに、大雨による浸水リスクが高い区域を都道府県知事が指定し、住宅や高齢者らが利用する施設の建築を許可制とする方針を明らかにした。安全なエリアへの集団移転支援も拡充。「田んぼダム」など雨水を一時的にためる川沿いの低地を保全する制度を設ける。
まち全体で水害を防ぐ「流域治水」関連法案を今国会に提出する。
2019年10月の台風19号、昨年の7月豪雨では各地の河川が氾濫。今後も気候変動で洪水の頻度は増加が見込まれ、法律に基づく規制や支援で対策の実効性を高める。
法案によると、まず東京など大都市を念頭に置いた「特定都市河川浸水被害対策法」を改正し、対象を①川幅が狭い②本流と支流の合流部――など氾濫しやすい全国の河川に拡大する。
リスクの高い地域は「浸水被害防止区域」に指定。住宅、病院、高齢者や障害者、乳幼児らが利用する施設などは新築前に安全を確認し、居室の高さ、強度を確保できなければ許可しない。官民で水害対策を協議する仕組みも設ける。
国は一定数の住宅が防災目的で集団移転する場合、移転先の土地造成費などを補助している。今回、支援対象として浸水被害防止区域からの移転も追加。住宅と一緒に移る高齢者施設についても経費を補助する。
田んぼダムは、収穫に支障がない範囲で雨水を水田や水路にため、河川への流入量を減らして氾濫を防ぐ。改正案は、水田を含む川沿いの低地を「貯留機能保全区域」に指定し、盛り土などの開発は都道府県への届け出を義務付ける。〔共同〕