川辺川ダムは八ッ場ダムと同様、国土交通省の直轄ダムです。八ッ場ダム事業では国と共同事業者である利根川流域5都県が負担金を支払いましたが、川辺川ダムの場合はダムが建設される球磨川水系が熊本県のみで完結するため、国と熊本県が事業費を負担します。共同事業者はダム完成後も維持管理費を負担することになります。
国土交通省は来(27)年度に川辺川ダムの本体工事に着手することとしており、現時点での完成予定は2035年度です。川辺川ダム事業は2009年に民主党政権により一旦は休止されましたが、2020年の球磨川水害を機に復活しました。旧計画を含めたダム建設の総事業費は4900億円です。
熊本県の地元紙によれば、川辺川ダム事業では熊本県が今後の予想負担額を公表していません。その理由について、熊本県は「国からの要請額が分からない」と説明しているとのことです。熊本県は事業の基本的な事項も知らされないまま、ダム計画の共同事業者になっているのでしょうか。
ダム事業では「(事業費を)小さく産んで大きく育てる」ことが常態化しています。以下の記事では市民団体による試算額が明らかにされていますが、これまでのダム事業の事例を踏まえれば、諸物価高騰、地質問題による工事の難航等々を理由に事業費がさらに膨らむ可能性があります。
◆2026年7月1日 熊本日日新聞
ー川辺川のダム、熊本県負担60年間で526億円 関連工事や漁業補償 今後も増加ー
国が球磨川支流の川辺川で進めるダム建設計画に関して、熊本県の負担金が1967~2026年度までの60年間で計526億円に上ることが1日、市民団体の情報開示請求で分かった。建設に伴う関連工事や漁協への補償が負担対象。根強い反対運動が続く中、本体着工前から地元が費用負担してきたことになる。総事業費4900億円の建設計画は完了しておらず、県の負担は今後も膨らむ。
建設省(現国土交通省)は1966年に旧川辺川ダム計画を発表。蒲島郁夫前知事の「白紙撤回」表明を受け、当時の民主党政権が2009年に中止方針を決めた。熊本豪雨を受け、国は22年に新たな流水型ダムを建設する河川整備計画を策定。旧計画は25年に廃止された。
国は27年度に流水型ダムの本体工事に着手し、35年度の完成を目指す。旧計画を含めたダム建設の総事業費は4900億円。
県河川課と国交省九州地方整備局によると、旧計画で県は水没する道路の付け替え工事や水没予定地の住民が移った代替地の造成費用を負担。流水型ダム計画では水
没予定地内の平場造成や流域に漁業権を持つ球磨川漁協への漁業補償、仮排水路の魚道整備、環境影響調査、模型実験の費用を負担している。
国の直轄事業負担金の割合は河川法が3割と規定。県の財政力も毎年考慮している。本年度の負担率は26・5%で、負担額は13億5千万円だった。
文書はダム計画に反対する市民団体「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」が県に開示請求し、5月までに開示された。県民の会は1日、県庁で記者会見し「川辺川のダムは、県民も負担して造ることになる。ダム問題を自分のこととして考えてほしい」と強調した。(金村貫太)
直轄事業負担金 国の直轄事業で恩恵を受ける都道府県が費用の一部を負担する仕組み。県内では、阿蘇山の砂防事業や白川の治水事業にも負担金が発生している。負担額は事業費から事務費や人件費を除き、年度ごとに負担率を算出して国が支出を求める。
◆2026年7月1日 熊本日日新聞
ー<川辺川のダム、熊本県負担526億円>県の将来負担、620億円 市民団体が試算 「別事業に活用を」ー
「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」は、川辺川の流水型ダム建設に伴って熊本県は今後、620億円を負担すると試算し「建設を中止すれば、他の事業に有効活用できる」と主張する。今後の負担額について、県は「提示できる文書がない」としている。
2021年度までの県の負担実績と22年度時点の残事業費約2680億円、直近6年間の平均負担率25・5%を基に算出した。試算した負担額は県が進める空港アクセス鉄道の概算事業費約610億円に匹敵し、野球場整備費137億〜166億円を上回る。
「県民の会」は1日の会見で、ダム建設が中止になれば負担金を福祉や教育、県有施設整備に充てられると指摘。開示請求に対して県が今後の負担額を「未定」と回答したことも問題視し「算出して県民に共有するべきだ」と主張した。
これに対し、県河川課は「国からの要請額が分からない以上、正確に今後の負担額を示せる文書は存在しない」と説明。ただ、昨年6月に公表した中期財政見通しでは、26〜30年度の負担額を215億9400万円と試算している。
川辺川の流水型ダムは、建設の是非を巡って地元で意見が分かれる。昨年9月に国が人吉市で開いた公聴会では、公述人28人のうち22人が反対意見を述べた。国土交通省の補償案受け入れを問う球磨川漁協の組合員投票では、投票した594人のうち162人が反対票を投じた。(以下略)
◆2026年7月2日 人吉新聞
ー川辺川ダム 県負担額は526億円 市民団体が開示請求ー
球磨川水系の川辺川ダム計画(流水型)を巡り、「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」は1日、県庁で記者会見を開いた。同会は県への行政文書開
示請求により、県の川辺川ダム計画に対する「これまでの負担額」が約526億円と公式に判明した一方で「今後の負担額」が未定とされたため、独自に約620億円
と算定したことを発表した。
今回の開示請求で最大の焦点となったのが、県負担金の実績判明と今後。2月に行った請求により、昭和42年度から令和8年度までの直轄事業負担金の累積支払額
が526億486万1392円(約526億円)であることが公式に分かった。
しかし、工事が本格化する令和9年度から同17年度までの今後の負担額について、県は「未定」と回答。さらに交付税措置などを考慮した「実質的な県負担額」の
文書も「作成または取得していない」として不存在による不開示決定を出した。
これからの負担額が「未定」とされたことを受け、同会は国が公表している総事業費4900億円や過去の県負担率(平均25.5%)などのデータを基に今後の負担額を独自に算定した。その結果、令和9年度以降の直轄事業負担金は620億円と推計され、水源地域整備計画(約216億円)や県単独事業(約111億円)を合算した負担総額を約1473億円とはじき出し、同会は「県民1人当たり約8.8万円の負担になる」とした。(以下略)